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濡れている。

不快な感覚に目が覚めた。天井には青く光る不気味なもの。仰向けに寝ながら、その半分は水に浸かっていた。飛び起きると部屋は窓もなく、真っ暗な空間に青い光がそこかしこで怪しく光っていた。

恐ろしい気持ちになって、部屋の唯一の出入り口に向かった。床で寝ていたかのように体が痛んだが、一刻も早くこのくらい部屋から脱出したかった。誘拐事件に巻き込まれたなんて、絶対に嫌だ。
部屋の外には、古びた木箱やストレージボックスが置いてある。宝箱といった風貌に、興味本位で開くと、中身は空だった。
そのまた先には背丈以上の崖がある。これを乗り越えば外に出られそうだ。

「あれ?」

宝箱を積んで乗り越えるとその先には、大自然が広がっていた。

私は、大自然を前に絶望した。

ここは一体どこなんだろうか。。山脈と広い平原。どこもかしこも大自然だ。それから一番目を引くのが、城だ。城がある。しかも黒いモヤで覆われていて、正常な状態には見えなかった。

直感した。ここは日本じゃない。どこか別の国だ。

「さむ…」

爽やかな風に吹かれて、自分がずぶ濡れなことを思い出した。太陽が出ているが、気温としては、春先の少し肌寒さがある感覚だ。このままだと体を冷やす。
誰か人を探して、助けを求めよう。この異常事態に、自然豊かな大地へ足を踏み出した。


結論から言うと、人に助けを求めるのは難しそうだった。
まず外へ出て一番に、坂下の教会のような建物に向かった。絶対人がいると思ったから。でも近づくに連れて、建物や周辺の石畳が半壊しているのが見てとれた。半壊した建物には、ロボット兵のようなものが転がっていた。苔が生えて緑っぽくなっているから、壊れてから相当時間が経っているんだろう。

それに豚の顔した生き物が、鈍器を持ってうろついていることがわかった。これは見つかってはいけないやつだ、と本能が言う。理性があるようにも、言葉が通じるようにも見えない。これは、早速詰んだかもしれない…。

先に進むのが恐ろしくなって、坂を登り、焚き火跡に火打ち石的なサムシングを発見したので、勘で火をつけることに成功した。やる気になればなんとかなるのと、漫画や映画でなんちゃって知識が役立ったことに、達成感と充実感に気持ちが落ち着いた。ここをキャンプ地とする。

近くにりんごが実っていたので、2個手に入れて、1つ口に運ぶ。水分も十分取れる。近くにりんごがあってよかった…。あとは体に害がないことを祈るだけだ。

腰を据えて状況を整理しよう。

私は日本に住む大学生で、実家を離れていた。連休に帰省しようと電車に乗ったところ、うたた寝をして、それから。目が覚めたら半分水に浸っていた。どういうこと??

手荷物は、ジーンズのポケットに入れていたスマホと、腕時計。着の身着のままって感じだ。腕時計は水没したおかげで、無事ご臨終だ。スマホは耐水機能のおかげで、バッテリーの残りが70%だと確認した。電波はつながっていないし、ネットも電話も無理。とりま景色いいから写真撮るか。現実逃避は心の健康のためにあるのよ。

ちょうど昼時だろうか。太陽が高い位置にある。このまま座ってても、夜が来て怖い思いをするんだろう。すこしでも助かりたい気持ちが優って、近くを探索することに決めた。火はつけっぱなしだ。そういえば、常緑樹を火にくべると狼煙になるって聞いたけど、ほんとかな?試したいかも。

さっきの豚の顔した生き物に見つからないように、石畳に沿って移動。何が自分を害するのかわからないので、木の棒を握りしめて。


「いや待って。本当にここどこ??」

日本どころか、人の気配が全くない。滅んだのか?っていうくらい人工物が壊れている。
しかも豚の顔した生き物がうじゃうじゃいるし、武装してる。弓矢を持ったやつもいるし、矢倉を組んでるし、完全に見つかったら殺される。絶対に助からない。
加えて、この大地は崖に囲まれて容易に脱出するのは難しい。飛び降りたら絶対死ぬし、ロッククライミングをテレビで見てることしかしていない一般人Aは、無力に下に広がる草原を見てることくらいしかできない。

「どうすんだこれ、どうしよう。本当にこのまま飢えて死ぬか、殺されて死ぬじゃん」

親不孝な娘を許してくれ。私はこの壮大な大地に骨を埋めます。

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