深夜のハイウェイを走るのはとても気持ちが落ち着いた。と言っても運転しているのは一松くんで、私は助手席でただ景色を眺めているだけなのだけど。
夜景を眺めながらシートに背を深くしずめる。クリスマスシーズンの街はいつも以上に輝いて、高層ビルから降り注ぐダイヤのような光がハイウェイに満ちていた。そしてマシュマロのようなシートは悲しみに暮れる私を優しく包み込んだ。ラジオからは深夜のハイウェイにぴったりな80年代の洋楽が流れている。キラキラしていて、ハイウェイに溶けていく。まるで映画のよう。



「ねぇ、いい加減泣くの止めたら」


「…泣いてなんかないわ」



一松くんのスーツの袖口から覗いた時計の針が、日付が変わってしまったのを教えてくれた。街の明かりに照らされた一松くんの髪の毛が揺れて、シャララランと星屑をばら撒いているようだった。一松くんが瞬きをする度に、彼と同じ長いまつ毛が頬に影を作っていた。
ハンドルをきる一松くんの拳も、ブルーの彼の拳にそっくりだった。でも、彼とは全く違う猫背なの。


瞼をそっと閉じる。瞼にうつるのは、真っ赤なドレスを着た女の子の手を取り、踊りに誘うブルーの彼。彼の誠実でまっすぐな瞳。影を作る長い睫毛。私は彼に手を取られることなんてなかった。そして、それを目にした瞬間に、ピンクのシャンパンが注がれたグラスを落としてしまった。グラスは大きな音を立て床をピンクに染めた。散らばったグラスの破片は小さなダイヤのようだった。まるで私の心臓を棘刺しているよう。彼と女の子は気づきなんてしない。なんてみっともないの。思い出すと、溢れた涙が震えながら頬を伝って、淡いパープルのドレスに滲んで消えた。



日付が変わったというのに高層ビルは点々と明かりが灯っていて、オレンジの街頭と混ざり合っている。ハイウェイの両脇には相変わらず高層ビルが立ち並んでいて、遠くで東京タワーとお月様が覗いていた。こんな都会の真ん中を車で走り抜けるなんて、夜空を飛んでいるかのよう。一松くんはラジオから流れるミュージックに合わせて小さく歌っていた。


今夜こそ、彼の背中に腕を回したかったのに。しゃんとしていて、大きな背中。イエローのリキュールに酔いながら、ピンクやパープル、ブルーの淡い明かりの中で踊るのは私じゃなくてあの子。膝から崩れ落近ちてしまいそうなほどの悲しみが襲った私の手を取り、その場から連れ出してくれたのは一松くんだった。







「だから、最初から俺にしとけって言ったのに…」


ハイウェイを降りて、ショーウィンドーに囲まれた街中の一番最初の信号。相変わらずラジオから流れるのはよその国のミュージック。こんな切ない夜に踊りたくなるようなポップでカラフルな音色。私の顎先を掴んで照れくさそうに、真剣な眼差し。彼の瞳から溢れるパープルのシューティングスターに射抜かれる。彼を愛してはダメと気付いても、もう戻れないの。この恋、もう戻れないわ。




20151221/ハイウェイに乗って
music by TF6





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