いつも無理をしてるね/三日月・オーガス


「ユウ、」

どうしたの、と心配するミカの声が聞こえる。鉄華団本部の誰も通らないような真っ暗な廊下で、膝を抱え込むようにして座り込んでいた。重く項垂れた頭を上げ、立ち止まるミカを見上げた。

『どうしようミカ』
「何、どうしたの」

やっとのことで絞り出した声は少し掠れていて、喉がカラカラに乾いているのを感じた。立ち止まっていたミカは、同じように隣へ座り込んだ。表情はいつもと変わらない無表情だったが心配してくれているのだということが声で分かった。

『私は、私が自分でそうしてしまったことなのに、すごく嫌なの』

数時間前に起きた事を思い出しながら、主語のない言葉を紡ぐ。何か言葉にして吐き出さないと、今にも叫び出してしまいそうなのだ。

『悔しいの。なんであそこで、私はあの返事をしてしまったのか。すごく悔しいの。夢に出るほど、悔しくて悔しくて、選択を間違えてしまったことに後悔が止まらなくて、』

溢れ出した言葉はとまらない。とてつもない後悔だけがいつまでもいつまでも残って、嫌な程悔しい思いがじわじわと胸を焦がしている。

『そうしたのは私なのに、』
「別に急いでないし、話すのゆっくりでいいよ」
『ありがと...ミカ』

ミカは優しいからきっと知らないのだろう。平等に接するということで苦しむ人間がいるということに。一番じゃなきゃ意味が無いともがき、悩み、妬みに引っ張られて立ち上がれないということに。

「俺にはその気持ちまだよく分かんないけど、ユウの話ならいつでも聞くから」

ミカは、相変わらず大きなその瞳を真っ直ぐこちらに向けて言った。

「それに、ユウってすごい弱いじゃん」
『え、』
「本当は傷ついてるのにそれを隠して強く生きてるって、オルガも言ってた。だから、俺とオルガの前なら無理する必要ないんじゃない?」

なんで一番言ってほしいこと分かったんだろう。ミカは珍しく頭を撫でて微笑んでいた。