憎しみはどこに/マクギリス・ファリド




この男、ギャラルホルンの一員であるマクギリス・ファリドからの申し出で鉄華団と今や革命軍はセブンスターズの1人であるラスタル・エリオンと交戦するはめになった。どこから来るのかは分からないが、いつも大丈夫だという自信があるらしい。オルガは信用していたみたいだが、人を嘲笑うような物言いも余裕ぶった表情も私は嫌いだ。それにお互い平等な交渉だと思わせておいてその実は何を企んでいるのか分からない。今だって1人双眼鏡で何を見ているのか。レンズの向こうに何が見えるというのだろう。

『貴方は何を考えているの?』

自分への突然の問いかけに、こちらを一瞥するも再び双眼鏡へと目を向けた。

「...ユウ・シラギか。それはどういう意味で言っている?今この瞬間か?それとも、」
『全てよ。ギャラルホルンに居る時も、2年前鉄華団に声をかけた時も...ラスタル・エリオンとの戦いに敗れこうして逃げている時も』
「それを君に言ったとしてどうする?何があるというのだ」
『別に何も変わらないしどうにもならないわ。ただ、貴方がどう考えているのかが分かれば、どうしてシノがいなくならなくてはいけなかったのか少しは理解できるかもしれないと思って』

先の戦いで私たちは実質敗れた。まだ諦めてはいないが、充分な物資も無くもうボロボロでしかない。何よりもまた大切な仲間を沢山失ってしまった。特にシノがいなくならなければいけなかったのは、この男のせいであそこまで追い詰められた戦いになったからだと言っても過言ではないだろう。

「あそこで彼が犠牲になったのは全て私のせいだとでも?もしそう考えているのならそれはただの言い掛かりだ」
『思ってるわ。だって貴方がラスタル・エリオンに目をつけられなければあの状況にもならなかった。それに...他にも貴方のことよく思ってない人がいるみたいだし』

偶然ラスタル側のMSと交戦しているところを見かけたがあの機体は以前にも見たことがある。2年前、マクギリスの隣に居たという人物が乗っている機体と同じようだった。仮に仲間内で恨まれていたとしても不思議ではない。

「君は随分と都合の良い頭を持っているようだな。こちらが無理矢理戦場に引き込んだわけではないだろう。最終的に行動を共にすると決めたのは君達の団長だ」
『それもそうね。だけど私はやっぱり貴方のせいでもあると思うわ』
「何故そこまで私にこだわる?」
『だって貴方は誰も知り得ないところで企んでいる事があるのでしょう?その為に私たちをも利用している』

一呼吸置いて流れるようにこちらへ向けられた双眸からは光を感じられない。本来なら透き通っているその翡翠は闇を吸収したかのように暗くどこまでも曇っている。目の前に居るはずの私さえそこには存在していない。

「どうしてそう思う。仮に私が君を、鉄華団を利用しているとしよう。だからどうしたというのだ。尚のことその理由を君に話す義理はない」
『いいえ、やっぱりあるわ。それがとても重要なの。シノがいなくなった理由と同じくらい』

こちらの答えにマクギリスは何を思ったのか、わざとらしく鼻を鳴らして嘲笑った。

「では君がそう思う理由を聞かせてくれないか?」
『そんなの簡単よ。分からないならよく聞いて。一度しか言わないもの』

向かい合ったマクギリスの襟元を思い切り引き寄せ、そっと耳元で囁くように、それでいてハッキリと呟いた。

『貴方の考えていることを全部滅茶苦茶に潰して地獄に落とすためよ』

私の言葉に、大嫌いな余裕ぶった顔が一瞬だけど確かに苦痛に歪むのを見た。