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負傷者の手当へ向かう前に、包帯や消毒液などの消耗品を確保しに行くことにした。無くなってから取りに来るより先に持って行ってしまった方が楽だ。なんせ混乱した今の状態では、人手も足りず取りに行く暇もないかもしれない。どれだけあれば良いだろうかと思案しつつ階段を登る途中、三日月の後ろ姿が見えた。

『三日月〜...とクーデリアさんか』

登りきった先には三日月とクーデリア、それと見たことの無い女性が立っていた。先ほど部屋に居なかった従者の方だろうか。こちらに駆け寄ってきたクーデリアは目の前で頭を下げた。

「あの、先程はシアンさんにも守って頂き...ありがとうございました!」
『いや、いいよ別に。気にしないで』

顔を上げた彼女は、まるで苦虫でも噛み潰したかのような表情をしている。返事に納得がいかないということもあるようだが、自分のせいで大勢の犠牲者が出たと思っているらしい。

「マジでやめて。たかがアンタのせいでアイツらが死んだなんて」
『ミカ...』
「俺の仲間をバカにしないで」

彼女の言葉に珍しく怒りを顕にした三日月。確かにあの時、クーデリアを守る為に皆が出撃していったわけではないのだ。死んでいった者達の中には彼女の存在を一切知らなかった者もいる。

「シアン、行こう」
『あ、うん』

促され出ていこうとしたが、視界に映るクーデリアの表情はすっかり落ち込んでしまっていた。

『ごめんミカ、後から行くから先行ってて。クーデリアさんちょっと外歩きませんか?』

返事を聞いた三日月は二人分の資材を持ってさっさと部屋を出ていってしまった。正直なんで自分がここに留まったのか分からない。なんとなく、だ。従者の方に一言断りを入れ、クーデリアと二人外に出るとまるで独り言のように彼女は言葉を零し始めた。

「私は、何も分かっていなかった。ただの世間知らずのお嬢様で、でも...だからこそ分かりたいって...」
『うん』
「だけどあの目...」
『あの目?』

もしかしてミカ?と確認すると彼女はゆっくりと頷いた。

「なんだか見透かされてるみたいで...笑われてるみたいで...」

今、完全に下を向いてしまったクーデリアに掛けるべき言葉はなんだろうか。笑われているみたいというのは考えたこともなかったが、確かに三日月の目は大きくて、透き通っていて、純粋さを感じる。きっとそれ故、見透かされているみたいだという彼女の言葉には頷けるものがあった。

『あれ...?何か笑い声聞こえません?』
「あっ...」

あの場に似合わぬ笑い声を辿っていくと食堂にはアトラとクッキー、クラッカーが揃っていた。何がそんなに面白いのかクラッカーは笑い続けている。

「あ!シアン姉ー!」
「シアン姉ー!」
『二人共元気だね』
「お疲れ様シアン」
『アトラも配達ありがとう』

駆け寄ってきたクッキーとクラッカーを抱きしめつつアトラに挨拶をする。ふとクーデリアに気づいた二人が不思議そうに見ていた。しかし、アトラのテレビで見たという発言によりすぐさま二人に囲まれたクーデリアは戸惑いながらも笑顔を浮かべている。

『あ、やっばいミカに後から行くって言ったんだ!ごめん三人ともクーデリアさんのことよろしく!』
「えっ、うん、分かった!」

クーデリアを任せると三日月を探すべく食堂をあとにした。