01
日が暮れ暗い闇に包まれた外とは反対に、食堂は明るい空気に包まれていた。普段の冷たい夕食とは違い、アトラの作った温かいスープを皆嬉しそうに受け取っている。その後一軍の面々が部屋から出てきていないということもあり、参番組の子どもたちはいつもより笑顔を見せていた。そんな様子の仲間達を見る度、こちらも自然と笑みが零れる。勿論、ビスケットと共に手伝いをしてくれているクッキーとクラッカー、料理を作ってくれたアトラ、それに不慣れなのだろうが一生懸命手伝ってくれているクーデリアには感謝の気持ちでいっぱいだ。その中で一緒に配膳をしていると、ユージンに声を掛けられたことに気づかなかった。
「おいシアン、そろそろだってよ」
『あ!ユージン、ごめん気づかなかった。声掛けてよ』
「さっきから掛けてたっつの。お前が気付かなかったんだろ」
『そっかありがとう。他のみんなは?』
「もう向こう行ってる。後は俺らだけだから行くぞ」
はーい、と一言返すと気を抜きすぎだと怒られた。食堂を出て、合流したビスケットとシノと共に一軍の部屋へと向かう。温かいスープを乗せたカートを押し入口に着くと、ビスケットと二人で中へ入った。配っている最中、具が少ない等のクレームを受け蹴り出されたビスケットを追うように部屋を出る。丁度同じタイミングで配り終えたらしいユージンとシノも部屋から出てきていた。四人で顔を見合わせ、オルガと三日月を呼びに行く。
『オルガ』
「配れたか?」
『うん、全く気づいてないよ』
「だろうな。あとは運ぶだけだ」
あれから作戦会議を開き、一軍のスープに即効性の睡眠薬を入れるという事となった。あの一軍のことだ、まさかそんなものが入っていると思わないだろう。案の定、微塵も疑う素振りも無く受け取ってすぐに手を付けていた。程なくして眠りについたことだろう。
「行くか」
オルガは近くに居たシノに声を掛け、別の部屋に全員運ぶと言った。一緒に出て行こうとするユージン、ビスケット、三日月のあとを当たり前のように着いていこうとしたが、俺達が運ぶから、と三日月に止められてしまった。こういう時程男に生まれたかったと感じる。
『えー...』
そうしてぽつんと一人置いていかれたものの、十分程ですぐに三日月が呼びに戻ってきた。
『ねえ三日月、これが成功したら今後どうなるのかな』
「成功したら、じゃなくて成功するよ」
『相変わらずすごい自信だね』
「だって、オルガが本気だったから」
本気のオルガなら大丈夫だ、と隣で三日月は淡々と呟いた。顔こそ無表情なものの、夕方の時と言い本当に信頼を寄せているんだなと感じずにはいられない。
「着いた」
ドアを開くと明かりの無い真っ暗な闇が広がっていた。床には、まだ眠ったままの一軍が両手と両足を縛られ転がっている。こうして見ると間抜けなものだ。
『にしてもよく運んだね...』
一軍だけとはいえ大きな男を何人も担いで運んだという事実にこちらが疲労を感じる。
「ねえオルガ」
不意にビスケットが指差した先では、物音を聞いてやっと起きたのか縛られていても体が動くのが見えた。なんだこれは、と状況を把握出来てはいないようだが
「おはようございます。薬入りの飯の味はいかがでしたか?」
薬と聞いて黙っていられなかったのか、一番前で転がっている一人が喚いた。縛られた状態でなお暴言を吐く様子に反吐が出る。宜しくない態度にオルガが蹴りを入れると、男は上から目線で助けを請い始めた。
「無能な指揮のせいで、死ななくでいい奴らが死んだ。その落とし前はキッチリつけてもらう」
オルガの言葉に反応するように、自然と三日月が前へ出る。男の焦ったように待ってくれと許しを請う声も虚しく、頭を撃ち抜かれ呆気なく死んだ。その一連の様子を見ていた他の男達は怯えたように震えている。
「これからCGSは俺達のものだ。さあ選べ、俺達宇宙鼠の下で働き続けるか、それともここから出ていくか」