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クーデリアが声を上げたのは、三日月に言い掛かりをつけるトドにグーパンチを御見舞してやろうと思っていた時だった。遠慮がちに話を始めた彼女は、自分の護衛任務を続けて欲しいと申し出た。

「そうすれば、当面の活動資金はなんとかなるのでは?」
『まあ、それはそうだよね...』

資金を出してくれる人物にアテもあるのだと言う。こちらとしては有難い申し出だと思うが、決めるのはオルガだ。

「アテ?」
「独立運動のスポンサーとして、私を支えてくれた人物」

その者の名はノブリス・ゴルドン。名前を聞いたビスケットやトドがすぐに反応を示した。なんでもすごい大金持ちなんだそう。成金ぽい名前だなと思わず思ってしまったのは秘密にしておこう。当面の資金はなんとかなると安心しているビスケットに続いて、三日月とバルバトスがいればなんとかなるとタカキが誇らしげに言った。

「引き続きのご利用ありがとうございます。俺達鉄華団は、必ず貴女を無事地球まで送り届けてみせましょう」

クーデリアと改めて向かい合ったオルガは、依頼を引き受ける意向を伝えた。今は他にそれらしい選択肢など無いのだから当然の答えと言えるだろう。それを聞いた彼女は、安堵の笑みを浮かべお礼の言葉を述べた。

「てか、鉄華団ってなんすか?」
「俺達の名前だ、さっき決めた」
「はあー?!何勝手に...!」
『さっき聞いたけどユージンが考えるよりはセンスいいよね』
「おいシアンてめえ...」

ならユージンはどう名付けるのかと問えば、言葉を詰まらせて悔しそうにしている。

「そ、そういうのは今すぐに思いつくもんじゃねえだろ!」
『ふーん、じゃあ思いついたら教えて欲しいなー?』
「なっ...上等じゃねえか!」
『オッケー気長に待ってるね〜』

それでもまだ何か言いたげなユージンは放っておいて、三日月の元へ駆け寄る。

『また火星ヤシ?』

いくつもの火星ヤシを、ジャケットから取り出しては口に運んでいる。欲しいのかと言わんばかりに目の前に差し出されたが、丁重にお断りしておいた。ハズレを引いた時の何とも言えない味は出来れば遠慮したい。

『鉄華団ってさ、なんかかっこいい名前だよね。ミカだったら火星ヤシ団とかになりそう』
「ダメなの?」

真面目に聞いてくる三日月を見て、決めたのが本当にオルガで良かったと安堵した。

『ダメっていうか...ほら、火星ヤシって食べ物の名前だし...組織の名前って感じじゃないというか...』
「ふーん、そういうものなんだ。じゃあ、シアンならなんてつけるの?」
『私?私は...』

皆が居れば名前なんて何でもいいと思っていた為、ユージンだけでなく、自分も暫くはこの課題に悩まされそうだと感じた。

『また今度ね!』