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CGSから鉄華団と改名したことより、遂に今日から新しい日々が始まった。乗っ取って早々は仕事も無く問題だらけで全員共倒れになってしまうのかと心配もしたが、クーデリアのお陰でまだ大丈夫そうだ。それだけではなく、CGS時代から共に仕事をしてきたヤマギ達整備班の皆ともまた一緒に作業が出来る。そのことが嬉しくてたまらないのだが、いつまでも浮かれてはいられない。いつか自分だけ置いていかれないよう気合を入れて仕事に取り組まねば。さっそくMWの整備に取り掛かろうと、邪魔になる前に髪を束ねる。

『ヤマギー』
「何、シアン」
『ごめん特に用事はないよ』
「意味が分からないんだけど」

先に来ていたヤマギを見つけ、その隣で作業を始めたのだが、やはり落ち着いてはいられなかった。当たり前だが、今みたいにヤマギに声を掛けても怒られることは無い。それに、前は午前と午後のノルマがキツく皆それを終わらせることに必死で、作業中に気軽に声を掛けられる状態ではなかったということもある。

『いや、ヤマギが隣に居るなーと思って』
「ますます意味がわからないよ」
『そうかなー?だってさ、またヤマギとこうやって仕事出来てることがすごく嬉しいんだよ。そしたら意味なんてなくても声掛けちゃうでしょう?』

訳を聞いたヤマギは、それなら仕方ないね、とおかしそうに笑った。相変わらず綺麗に笑うもんだ、と頭の片隅では思いながらそれを口にすることはない。ふと、話し掛けられながらも黙々と作業を続けていたヤマギの手が止まった。

「俺も、シアンとまたこうして一緒に仕事が出来て嬉しいよ」

ハッキリ伝えられた言葉とは違い、覗き見えた片目は恥ずかしそうに泳いでいた。

『ありがとう、ヤマギ』
「うん」

その後MWの整備をしていると、昨日ギャラルホルンから回収した機体を先に見て欲しいと頼まれヤマギと二人でそちらの作業を始めた。MSを三日月のバルバトス以外で触るのは今回が初めてになる。元々MSの整備自体も得意ではなかったが、おやっさんと二人でなんとか頑張ったものだ。

「やっぱりモビルワーカーとは結構違うね」
『うん...バルバトスよりはほんのちょっとまだマシって感じだけどやっぱ複雑...』

バルバトスの方に目を向けると、会議を終えたらしいオルガとビスケットが来ていた。

『ビスケット〜!オルガー!』
「シアン、お疲れ様」
『ありがとう二人もお疲れ様。会議終わったの?』
「またこれから集まるけどな。次はシアンも出てくれないか?」
『私も?』

自分が会議に出て何か出来るだろうか。まだ返事もしていないのだがオルガの隣でビスケットまでも同意し始めている。

「でも確かに、シアンが居てくれたら俺は安心だなー」
『え、そう...?私別に何も出来ないと思うけど』
「いやそうでもねえ。シアンが居るってだけで安心する奴らは他にもいるさ」
『じゃあ私、皆を安心させる係?』

いい例えが見つからずよく分からない言い方になってしまった。丁度バルバトスから降りてきた三日月には、何それとツッコミを入れられ、改めてよく分からない。

「うーん、鉄華団の精神安定剤って感じじゃないかな?」
「それってどういう意味?」
「シアンがいることによって場に安心感が生まれるというか...落ち着くというか...」
『三人は私が居ると安心すると...?』

三人はそれぞれ顔を見合わせた後、首を縦に振って大きく頷いた。

『じゃあ私は今日から皆に安心を与え続けるよ!』

今まで通りでいいと慌てるビスケットの声はもうとっくに聞こえてはいなかった。