03




午後の作業が終わった後、暫く明日の最終チェックをもう一度行っていた。昨晩確認し終えたものの、一晩で何が起こるか分からない。参番組には必ず生きて帰還して欲しいと念入りにメンテナンスと確認を重ねていた。

「まだ起きてたのか。気持ちは分かるがそろそろ寝とかねえと流石に倒れちまうぞ」
『うん、もう大丈夫だって分かってるんだけど、昨日ミカに私のメンテナンス安心するって言われたから念入りに見ときたくて』

道具を変えようとMWから降りると、爆発音のようなものと共に地面が揺れた。鳴り止むことなく連続で響くそれにここが襲撃されているということは安易に理解出来た。そうと分かれば作業を中断せざるを得ない。

『おやっさん!』
「ああ、出撃準備しとけ!」
『はい!ここは任せて!』

こちらの返事に応えるように片手を上げるとおやっさんは出入口へと走っていった。それぞれにやるべき役割がある。まず戦闘が始まれば参番組がここに集まってくる。いつも真っ先に飛び込んでくるのは三日月だ。

「シアン!」
『三日月!シノ!』
「先出るから」
『オッケー、ミカ。メンテナンス完璧だよ』
「ありがとう」

三日月と共にシノ、昭弘が出撃していき、手伝いに来てくれたビスケットに続いてユージン、最後にオルガが遅れてやってきた。

「おせーぞ!さっき一番隊の三日月とシノが出て、その後に二番隊の昭弘たちも出てった!」

ざっとオルガに状況を伝えると壱番組のおっさん達が偉そうに怒鳴り散らしながらこちらへ向かってきた。どうやらこの戦闘はギャラルホルンからの襲撃によって起き、一軍はその背後に回り込むという作戦らしい。

「やっぱ行くしかねえか...」
『ユージン、MWの方はメンテナンスばっちりだから!』
「おう!」

覚悟を決めたのか先程より真剣な顔つきで操縦席に乗り込んでいった。こうして戦闘になると整備班は待つしかないという現実に打ちのめされそうになる時がある。

「シアン、ちょっといい?」
『なに、ビスケット』

オルガも、とビスケットに耳を傾けるとCGSの動力炉以外でエイハブ・ウェーブが観測されているそうだ。相手がギャラルホルンでありエイハブ・ウェーブが観測されているということは、周辺にこちらでは太刀打ちできない機体が存在している。

「ビスケット、シアン」
『何?』
「二人に頼みがある」

ユージンとオルガがMWで出撃するのを見届けると、オルガからの頼みを受け例のお嬢様を保護しに行くこととなった。どこにも所属していないこともあり、未だに話題のお嬢様とは顔を合わせたことがない。戦闘ですっかり人の捌けた廊下をビスケットと駆け足で部屋へと向かう。そもそも部屋がどこなのかも分からないが。

『ねえビスケット、部屋どこなの?』
「確かこの辺だったような...」

この際手当たり次第に開けていくしかないだろうとドアに手をかける。開錠した音ともに開くと、例のお嬢様は綺麗な金髪を闇の中で煌めかせていた。

『居た!』
「さすがシアン!早く行こう!」

片側のベッドが空なのを見る限りどうやらここにはお嬢様一人しか居ないようだ。よくは分からないが従者の一人くらいいるものでは無いのだろうか。無遠慮にも部屋に入り込みお嬢様の前に手を差し出すと驚いたように目を見開いた。

「貴女は...」
『私の事は後で説明するから、今は早く来て!逃げるよ!』

そう言うと驚いたままのお嬢様の手を掴んで部屋を飛び出した。

「あの、どこへ行くのですか!」
『来れば分かるよ!』
「せめて貴女のお名前を!」
『シアン!』
「シアンさん!私はクーデリア・藍那・バーンスタインです!」