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「着いた!」

ビスケットに連れられてやって来たのは普段はあまり訪れないようにしている倉庫だった。ビスケットは、状況が飲み込めずおどおどしたままのクーデリアには目も向けずロックキーに手をかけている。

「あの、私はフミタンを待たねば」
「あのままあそこに居たら死にますよ!」

死ぬという言葉に突然現実を突きつけられたのか、死ぬという言葉を繰り返し呟いている。

「私は死ぬのですか?」
「だから今そうならないよう努力してるところです!」
『どう?』
「開いた!」

開いた扉の先に待っていたのは先程戦闘に出たMWとは比べ物にならない巨大なモビルスーツ。これが基地の中にあるということは、CGSの中でもほんの一部の者しか知らない。ここの社長が転売目的で所有しているのだ。しかし社長は勿論、CGSの者達に決して知られることのないよう少しずつ秘密裏にメンテナンスが行われてきた。最後の切り札とでも言うべきだろうか。壱番組の動向を不審に感じたオルガがからこれの準備を進めるよう言われていた。既におやっさんやヤマギたち整備班は作業を始めている。

「ああ、もう始めてるぞ!本当に良いんだな!」
「頼みます!俺はまだこれからやることがあるから!」
『おやっさんお待たせ!』
「向こうは大丈夫か!」
『完璧!作業入ります!』

ビスケットは後の事を頼むとだけ告げ足早に部屋を出ていった。おやっさんからの指示に忙しなく動き回るヤマギを手伝う為、ばさばさと邪魔な髪を一つにまとめる。

「ヤマギ!12番!シアンはコックピットの最終確認やってくれ!」
「はい!すぐに!」
『はい!』

作業道具を手に取ると居場所に困るクーデリアの姿が視界の端に映った。

「あの、私も何かお手伝いを...」
『大丈夫、危ないからもっと下がってて』
「...っ」
『か弱いお嬢様に今出来ることなんてないよ』
「ですが、シアンさんも私と同じ女性ではありませんか」
『確かに性別は同じかもしれないけど、ここでは女も男も関係ない。仕事が出来るか出来ないかだけだ』

クーデリアに背を向けコックピットの整備に入るべく階段に足をかける。まさか護衛するのがあんな世間知らずの甘っちょろいお嬢様だとは思わなかった。勿論今は構っている暇などない。一刻も早くこれを何とかしなければならないのだ。

『ごめんヤマギ!こっちにそれ持ってきて!』
「はい!」
『おやっさんコックピット大丈夫そう!』
「終わったらこっち手伝ってくれ!」

コックピットは見たところ設備に問題は無く大丈夫そうだ。一応普段から、おやっさんとヤマギ以外には見つからぬよう夜中だけ整備しに来ていた。いつか必ずこれを使う日が来るだろう。そう確信して直し続けた。そして乗るのは彼だろうと予想もして。

『コックピット確認終わったよ!どこ入ればいい?』
「これ持ってきてくれ!」
『了解!』

辺りに響き続けている音がより一層重みを感じさせるものになった。どうやらMWでは無さそうだ。相手はギャラルホルン、ビスケットから聞いたエイハブ・ウェーブの話を考慮すれば向こうは遂にMSを出してきたということだろう。

『遂に...』

これから先も続くと感じていた世界が、少しずつ、だけど確実に変化していく予感がした。