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前に一度だけオルガから聞いたことがある。三日月から自分は次に何をすればいいかと問われるのだと。もしも、オルガの立場が自分自身だったらどうしていたかというより、三日月の立場が自分自身であったならと想像したものだ。指示を出す側の責任の重さは確かに辛いが、指示をされれば何でもやる気でいるというその精神の方がゾッとする。有り得ないと信じているものの、いつか死んで欲しいと言われた日には本当に死んでしまうのだろうかと、三日月・オーガスという人物に一抹の恐怖を感じた。

「おやっさん来たよ!」
「おう三日月」

重々しいシャッターが上がると、MWに乗った三日月の姿が見えた。

「三日月...」
「シアンここに居たんだ」
『うん、やっぱりミカが来たね』

いつか必ず、このMSにはオルガの指示を受けた三日月が乗ると予想していたのだ。見事正解したものの喜ぶ事ではない。三日月はMWを降りるとおやっさんのいるコックピット付近まで上がっていった。後に続いて登りきると最後の燃料補給が行われていた。

「これどうすんの」

マルバが転売目的で秘密裏に所有していたこと、コックピットはごっそり抜き取られていて使い物にならなかったこと、代わりにMWのシステムを流用することを一通り説明し終えると、説明書代わりのタブレット端末を三日月に差し出す。だが文字が読めぬことを思い出しすぐさま取り下げた。学のあるものの方が少ないのだから仕方ない。

「あー、だったな...まあ、欲しいのは阿頼耶識のインターフェースの部分だ」
『それに、私も細心の注意を払って作業したからコックピット周りは大丈夫』
「それなら安心だ」

自分の言葉に三日月が微かに笑ったのを確認できてどこかホッとしていた。その笑みが安堵からきていたものなら尚良いと思う。不意に先程まで黙っていたクーデリアが声を上げた。

「阿頼耶識...?それは特殊なナノマシンを使用する危険で人道に反したシステムだと...!」

クーデリアの言葉にかぶせるようにしておやっさんは実際の阿頼耶識の説明を聞かせてみせた。

「ナノマシンを使用し、脳に空間認識を司る器官を擬似的に形成し...っとまあこの場合モビルスーツの情報を直接脳で処理出来るようにするシステムだ」
『ミカ、そろそろいける?』
「いいよ」

淡々と準備を進めるこちらにも阿頼耶識を使用することにも納得がいかないのか彼女の顔は不安に満ちている。

『どうやって操縦してると思ってたの?』
「それは...」
「大体、これが無きゃ学もねえこいつらにこんなの動かせるわけないだろ」
「ですが...!」
『うん、そう、これがないと戦えないのは事実。だけどミカ、よく聞いて、これに乗ったらMWとは比じゃない情報のフィードバックがある』

なんせMWとMSとではどこをとっても雲泥の差だ。強い分、その反動は大きく計り知れない。今ここで三日月が乗って上手くいくという保証もない。いわば一種の賭けだ。勿論、負けてしまえば命を失う可能性もある。

『だからもし、もしも失敗してしまったらミカの脳神経は...』
「いいよ、元々そんな使ってないし」

真剣に伝えているというのに、当の本人のあっけらかんとした返答に思わず脱力してしまった。