※SSS


「真夜中にコンビニ行くのって最高に悪いことしてるみたいじゃない?」

 私がそう言うと大地は苦笑した。
 わかってるわかってる。仕事柄もっと悪いことをしてる人たちを相手にするもんね。深夜のコンビニなんて大地からすれば子供の戯れとしか思えないんでしょ。

「ああ、そうだな」

 適当に相槌を打ったのは、否定して私がこれ以上面倒なことを言わないようにするためだ。言葉の裏を汲み取れるくらい、私たちは共に幾夜を越えてきた。
 寝転がっていたダブルサイズのベッドから身を起こして大地の背中に抱き着く。背中に耳を押し当てると優しく動く心臓の音が聞こえて、ひどく心地が良い。私の好きな音。

「あと真夜中のスイーツ。これもかなり罪が重いですねえ」
「確かに」

 大地が笑って体が揺れて、そしてそれが私に伝わる。
 甘美な言葉を囁きあうわけでも身を焦がしてしまうこともないけれど、揺らぐ余地のない成熟された恋はとても安心できる。

「ねえ、一緒に悪いことしようよ」
「悪いこと?」
「今からコンビニ行って美味しいスイーツを買う」
「大罪だな、それは」
「でしょ」

 私の抱擁から逃れて立ち上がった大地は私に向かって手を差し出す。

「罪に加担するのか、俺は」
「よろしく相棒」

 その手を取って私も立ち上がった。
 時計の針は零時を指している。悪事を働くには最高の時間だ。