最初の従者オニワカ
放サモ世界に住み始めてから4か月半である翌年の1月中旬、この時点で既に3人と契約していた。宝蔵院オニワカ、ザバーニーヤ、犬山道節タダトモ。
実をいうと当初は一生誰とも契約するつもりはなかった。先に説明した通り転光契約は問題が多いのと、真神は一人の時間を大事にしたくあまり気をかけたくなかったから。
それぞれ契約に至るまでの話は長いので、今回は最初の従者のオニワカについて語る。
最初に契約したのは前世が弁慶だった宝蔵院オニワカという鬼である。主に用心棒として活躍し、今では彼なしでは生きていけないほど真神にとって頼れる存在になっている。
オニワカは角さえなければ現地人に見えるため、転光生という差別から逃れるために幼少期に角を折り、現地人と偽って生きてきた。お寺で拾われ育てられたが、住職と喧嘩をして家出し、転光生は基本的に苗字がないため、住職の姓を借りて宝蔵院オニワカと名乗る。
不器用な性格から、裏社会で東京と縁を作ってきた。主に用心棒の仕事が多く、池袋地下闘技場に出場して名をはせた時期もある。人を殺したことはないが、権能の簒奪を使い転光生の力を奪う「転光生狩り」といった暴力的な罪を重ね、力を蓄えてきた。
このような生活で東京と結ばれていたが、時とともに東京は平和になっていく。仕事と狩れる転光生も減り、地下闘技場とはモメていたので行きづらくなり、裏社会での悪名もあまり聞かなくなった。東京との縁が薄れ、消えそうになっていた時、オニワカは真神と半ば強引に契約することになる。
オニワカと真神が契約するに至るまで、2回会った。最初の出会いは、真神が放サモの世界に来た9月、その日から3日目のこと。
この世界では「アプリバトル」という、神器を使用して合法的に暴力を振るうことが許可されているゲームが存在する。真神は呪術廻戦の世界で一度村人に暴力を振るった経験があるが、基本的に善人で秩序と平穏を望んでいたため、アプリバトルを好まなかった。ギルドと呼ばれる組織に所属すれば、神器を持っていない人でも神器を授かることができるが、真神はまだ神器を持っていない。いつかアプリバトルをすることになるだろうと覚悟はしていたが、まさか住み始めて3日目にそのような状況に遭遇するとは思ってもいなかった。
不良に絡まれ、暴力を振るわれるのではないかと怯えていた時、白いフードをかぶった体躯のいい男が後ろから現れる。その男は「道を開けろ」と言いながら、薙刀の神器を一振りしただけで不良を撃退した。真神は彼にお礼を言い、名前を尋ねたが、男は振り返ることなく、顔も見せずに去ってしまう。
しかし、その時真神は男のパーカーのポケットから、かわいい小さなぬいぐるみのキーホルダーがたくさんぶら下がっているのを目にした。その意外なギャップに心を惹かれ、いつか再会できたらきちんとお礼を言いたいとしっかりと記憶に刻む。
インディーズバンドとして活動している真神は、ある日の路上ライブ後、後片付けに時間がかかり寮の門限に間に合うかどうか焦っていた。小柄で非力な真神は、重い荷物を乗せたキャリーカートを引きずりながら、速足で学園を目指す。途中、間に合いそうにないと判断し、近道を選ぶことにした。
その近道は街灯が少なく、お寺があって薄気味悪く、襲われる可能性もあるため、本来なら避けたい道。仕方なく駆け足で通り抜けようとした時、お寺の敷地内にある木の根元で青白くぼんやりと光る人影のようなものを見つけた。驚いて小さく悲鳴をあげた真神は、キャリーカートから荷物を落としてしまう。その音に反応し、青白い人影がのっそりと立ち上がり近づいてきた。
近づいてきたその人物のポケットから、以前見たあのキーホルダーがぶら下がっているのに気づく。お礼を伝え、なぜ青白いのか尋ねると、東京との縁が薄くなり消えそうだからだと、屈強な体つきながら弱々しく答えた。真神は今度は自分が彼を助けたいと思い、契約を迫るが断られてしまう。
それでも真神は諦めない。強情な男がどんどん薄くなっていき、足がもう見えなくなるまでになった時、何もできない、救えない悔しさから泣きながら彼を殴り蹴った。そんな真神を見て、彼は契約することに同意し、オニワカは真神の従者となった。
オニワカは体が元通りになり、元気も取り戻すと、さっそく従者らしく働こうと、真神の荷物と真神を抱えて門限に間に合うように走り出す。体躯がよく力持ちで、見かけによらず素早く、風を切るように走り、あっという間に学園のそばまで到着した。しかし、オニワカは校門までは事情があって行けないと言い、そこで別れることになる。真神は無事に門限を破ることなく寮に帰宅することができた。
オニワカとの距離感が掴めるようになるまで小さな事件がいくつかあったが、それについてはまた今度。
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