思いやりからの誤解 新米主と従者
これはギルドマスターになってから数日後の話である。
ギルドマスター代理のシロウからとある報告を受けた。サモナーズのポータルが攻撃され、防衛に向かうと誰もいないらしい。血気盛んな高伏ケンゴと、西遊記の孫悟空の疑いがあるハヌマンはアプリバトルができず、何もせずに拠点であるセーフハウスに帰ってくるという状況が続いているとのこと。これにより、彼らのうっぷんが溜まってきているという。
原因究明をするには現時点ではポータルを見張るしかないが、日々バンド活動やアーティスト活動で忙しい真神にはただ見張るだけの時間はない。弱小ギルドの人員不足が露呈した形だ。自分も近くを通った時は気を付けるようにするとだけ伝え、その報告は終わった。
数日後、偶然にもサモナーズのポータルの傍で戦っている体躯の良い男と複数人の獣人を遠目で発見した。後ろ姿はケンゴのように見えたので、「まああの人数なら1人でも大丈夫だろう」と歩いて近づくと、なんとオニワカだった。
オニワカは池袋バーサーカーズ所属であり、なぜサモナーズのポータルを守っているのか不思議だった。声をかけると、顔色が悪く、薙刀を振るう力もあまり入っていないようだった。真神はアプリバトルは苦手だが、この事態は見過ごせないと感じ、加勢することにする。そして2人で防衛に成功した。
オニワカになぜ他ギルドのポータルを防衛していたのか尋ねると、彼は言い淀んだ。しかし、真神が本気で問い詰める様子を見て話し始める。
転光生と契約する主との間でエネルギー供給が行われ、そのエネルギー量は転光生の力に依存するという。オニワカの権能は簒奪であり、これまで多くの転光生狩りで力を蓄えてきたため、その強さは相当なものとなっていた。そのため、真神への負担も大きくなっていた。
また、主との接触は縁を強化し、真神のエネルギー消費がさらに増加することになる。初対面と契約した時の2回しか会っていなかったが、それだけで真神の脆弱さを判断するのには十分だった。真神と接触せずに従者として役立とうと考え、他ギルドのポータルを防衛していたのである。
従者というものを持つのが初めてだった真神は、どう接していいかわからず、アプリバトルの時だけ召喚しようと思っていた。しかし契約以降、そのような場面もなく、忙しさにかまけて完全にオニワカの存在を忘れていた。
エネルギー供給について、そして忘れることが縁を薄れさせ供給量を減らすことも、すっかり失念していた真神は、弱ったオニワカに抱きついて接触による縁を供給した。するとオニワカは契約した時同様元気を取り戻したが、その後慌てて突き放すように距離を取った。
「なぜ接触した?会話だけでも十分接触に値する」と鬼のように怒りながら睨みつけた。
せっかく主への負担を減らそうと気遣っていたのに、無駄にされたことへの怒りだった。しかし真神はもう1つ忘れていたことがあったので謝罪しながら告げる。
実は真神はオニワカと契約した翌日、魂のお釣りを使いエネルギー供給の負担を0にしていた。それ以降も急遽契約する可能性を考慮し、その時には3人まで負担0にしていた。このことを伝え忘れていたために、遠隔で供給されるエネルギーを超える量をポータル防衛に費やしてしまい、弱っていったところを発見された。
負担0であるため安心し、接し方もわからなかったのでほったらかしにして働いていた。その結果、完全に忘れてしまい、供給量まで減らしていたことが悪かった。
オニワカはそんな想定外な話をすぐには信じられなかったが、真神が必死に話す様子を見るうちに肩を落とし怒りも収めた。無駄な心配と労力を使わせてしまったことに謝罪した真神は再度供給しようと近づくが、1歩近づけば3歩下がるオニワカ。今回は一度供給したものの、このようなことが続けばただ延命するだけになるのでお互い気を付けることを約束した。
そして今度こそ握手を試みようと手を伸ばすと、オニワカはパーカーで手を拭いてから恐る恐る手を握り返してきた。
身長190センチ、下駄を履いたら多分195センチという大柄な男がポケットから可愛いぬいぐるみのキーホルダーをぶら下げて、恥ずかしそうに手を伸ばすそのギャップに真神は思わず笑みがこぼれそうになった。しかし抱きつこうとして頭を掴まれ制止された。
その日は照れ屋でかわいいオニワカとの交流で終わり、「いい従者を持ったな」と満足しながら学校へ帰ったのであった。
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