まだ母と父が生きていた頃、私は帝光中に通っていた。


入ってる部活は調理部。


母が家事全般得意で、その血を受け継いだ私は、料理だけでなく家事全般が得意だったのだが、調理が好きだったため、調理部に入った。


特に調理は特技でプロと言えるまでに得意であったために、調理部では重宝されていた。


部活中に別の班の子達にヘルプを求められるのは日常茶飯事で、班決めの際は私を巡ってじゃんけん大会も起こるほどだった。


「おーい!江藤さん!助けて〜!」


『はーい』


私は自分の調理を終え、他の班のヘルプに回った。


「…わぁ、流石江藤さん、すっごい!超上手い!美味しそう〜!」


『ふふ、美味しいと思うよ』


別の班の女の子と顔を見合わせて笑う


「あ〜、おいしそ〜」


「あ、紫原くん!」


『むらさきばらくん…?』


急にドアからひょっこりと顔を覗かせた紫髪の男の子。


身長が高い。


…どっかで見たことあるような…


「ちょっと行ってくるね!」


『うん、行ってらっしゃい』


彼と同じクラスらしい彼女は、むらさきばらくんのところへとかけていく。


しばらくして、私のところへ戻ってくると


「ねえ、江藤さん、紫原くんに今日作ったのあげてもいいかな…?お腹空いてるらしいの…」


『え?私は構わないけど…』


「やった!ありがとう!」


彼女は今日作ったアップルパイとレモングミを持って彼のところへとかけていく。


会話が聞こえてきた


「…ん、うまー。これ誰作ったのー?」


「江藤さんよ。お礼なら彼女に言ってね」


二人の視線が私に刺さる


『え、えっと、…どうも…』


「ねぇ、ほんとにあんたが作ったの?」


彼…むらさきばらくんが、大きな歩幅でこちらへ歩いてくる。


『え、えっと…そうですけど…』


「まじ?店開けんじゃん。また作ってよ」


むらさきばらくんが感動したように驚いたあと、また作ってと言う。


『え、構いませんけど…』


「あんがと〜。俺、紫原敦。よろしく」


『私は江藤みのりです。よろしくお願いします』


自己紹介を終えると、紫原くんの部活がわかった。


「うん。俺バスケ部だから、今度持ってきてよ」


『あ、はい…』


バスケ部の紫原敦って…!!


私は驚きを隠しつつ、今度差し入れを持っていくことを約束した。