あれから、黒子くんとは会ったら会話をするくらいの仲になった


「おはようございます、江藤さん」


『おはよう、黒子くん』


「これから家庭科室ですか?」


『うん、これから差し入れの仕込みするの』


「なるほど」


『うん。着いてくる?』


首をかしげると、黒子くんは頷いた


二人で家庭科室に入り、私は家庭科室でレモングミとフルーツゼリーの仕込みを始め、黒子くんはテーブルで小説を読み始める


『…どう?最近の部活は』


「…どう、とは。変わりはありませんよ」


『そうなんだね』


手元に視線を置いたまま、会話を交わす


そのあとに落ちる沈黙も嫌じゃないから不思議だ


『…よし、できた』


「できました?」


『あ、うん』


私が二つを冷蔵庫に入れてホッとすると、いつの間にか隣に黒子くんがいた


「いつもありがとうございます。…彼らも、練習には来なくなっても、貴女の差し入れは食べに来るんです。現金ですよね」


『あはは、そうなの?』


「まぁ、来たときは練習をしてから帰りますから助かってますけどね」


『そうなんだ?ふふ、良かった』


少しでも役に立てているんなら良かった…


そんなことを思いながらエプロンを外した


「江藤さん、この後少し時間いいですか?」


『え?うん、いいけど…』


なんだろう…


疑問が芽生えた












私は黒子くんに連れられ、裏庭へ


『…どうしたの?黒子くん』


「…江藤さんは進学先、もう決めていますか?」


『え、うーん…まだ具体的には決めていないけど…黒子くんは?』


もう決めていたりするんだろうか


「僕は…」


俯く黒子くん


沈黙が落ちる


私は言葉を待つ


「…その。僕、高校は誠凛高校に行こうと思ってるんですけど。…もし、…よかったら…」


『…え…?』


さぁぁぁ…と風が二人の間を駆け抜ける


それって…


私に同じ高校に来て欲しいってこと…?


…でも、それは…


『…』


私は瞳を揺らし、視線を黒子くんから地面へと移した


「…すみません。無理強いをするつもりはないんです。ただ…」


『…ただ…?』


「…いえ、なんでもありません」


『…そっか』


まさか黒子くんにこんなことを言われるなんて思わなかった


どうしよう…


「…それじゃあ」


『う、うん…』


黒子くんは私に背を向けて歩きだした