帝光中学の卒業式後、黒子くんに制服のボタンをもらってから、私は黒子くんに会うことなく高校へ入学した


入学する高校は、両親が出会った秀徳高校


…そう、あの、緑間、高尾、宮地がいるあの秀徳だ


両親が秀徳で出会ったと聞いたとき、もし私がこの世界に組み込まれているのなら、私も秀徳で出会った人とお付き合いして、結婚して、家庭を持つのかな、何て考えた


それが高尾や宮地先輩だったらと考えなかった訳じゃないけど、私みたいな一般市民に高尾のようなハイスペックや、宮地先輩のような童顔イケメンは振り向いてくれないだろう


そんなことは私が一番わかっていた


でも、両親が出会った高校だし、私の推しのいる高校だし、行くところは秀徳以外には考えていなかった






『…桜の木…』


ふわりと春風に髪が靡く


桜が舞うこの学校で、新しい出会いが私を待っているような気がした













高尾side


入学式の日、遅刻しないように出て来たのはいいが、思いの外早く来すぎてしまったようで、体育館近くの校舎から、誰もいない校庭の桜の木を眺めていた


すると、女の子がやって来て桜の木を見上げていた


「…ふーん、こんなに早い時間に来るなんて、真面目なんかねぇ」


なんて思いながらその子を眺めていると、


ふわりと春風に髪が靡き、顔が見えた




どきっ



その時、恋に落ちる音がした









春風に靡く髪

(親が亡くなってから伸ばしている髪が春風に靡く)