家に帰り、部屋で音楽を聞いていると、お母さんに呼ばれた。


「みのりー!男の子が訪ねて着たわよ!」


男の子…?
赤也かな、いや、でも赤也ならお母さん〈赤也くん着てるわよ〉、って言うはず…

じゃあ誰…?


とりあえず、服装を整えて、下に下りる。


すると、聞き慣れないアルトボイスが鼓膜を揺する。


「みのりさんのお母様はとてもお若いんですね」


その声にお母さんは、


「やだー幸村くんったら!」


なんて無駄に若々しく照れている。


…ん?〈幸村くん〉?


リビングのテ椅子に腰掛けていたのは、赤也からよく話を聞く、幸村先輩だった。


「あら、みのり来たみたいね。じゃあ幸村くん、ゆっくりしていって頂戴ね♪」


お母さんは音符を飛ばしながらキッチンに消えた。


それを見送ると、幸村先輩は私のほうを向き、


「やぁ、江藤さん」


『…なんで、わたしのなまえ…』


幸村先輩とはほぼ初対面に近い筈だ。


「赤也から聞いたんだよ」


ニコリと微笑んで言う幸村先輩。


『あぁ…』


赤也から幸村先輩の話をよく聞くんだから、赤也が幸村先輩に私のことを話していても不思議はない。



『それ で、今日はなんの用事で…』


「じゃあ、単刀直入に言うよ。
















…江藤さん、うちの男子テニス部のマネージャーになってくれないか?」


『…マネー、ジャー…?』


「あぁ。」


幸村さんは真剣な表情して言う。


「…赤也からきみのことは聞いたよ」


『!!!』


赤也め…と内心赤也を恨む。


「でも、いつまでもそのままじゃ、キミは成長できないだろう?」


『…』


ごもっともだと思う…


「確かに男子テニス部に入れば、彼女達からの当たりは辛くなるだろう。でも約束するよ。赤也がキミを守っていたように、俺達も江藤さんを守ることを。」



『幸村先輩…』


「…マネージャー、やってくれるかい?」


この人たちのことを信じてみようと思った。



『…はい。やります』


「その返事を待ってたよ」


幸村先輩は、優しく笑った。





マネージャー、就任

(じゃあ、早速明日の朝練からお願いできるかな?6時開始で、江藤さんには早いかもしれないけど、迎えに来るから)(はい、ありがとうございます!明日からよろしくお願いします!)((やるからには徹底的にやらなきゃ!))