第一章
11.***
「そろそろ準備、宜しいですか?」
小さなステージ袖で、ある男はひそひそと声を殺して尋ねた。ぎょろりと見開かれたその目は怪しく光り、何かを警戒している様な、ぎらぎらとした高揚感と緊張を漂わせていた。
その相手――――カイゼル髭を蓄えた男は、蝶ネクタイを締めながら、ひどく穏やかな笑みを浮かべて返した。
「ええ。私はいつでも完璧ですよ」
そして更に片方の口角を上げ、続けた。
「そちらこそ、もう準備は宜しいのですか?」
***
第一章 了
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