第一章

 1.

途切れ途切れになった雲の合間から注ぐ、穏やかな太陽の光。
それに照らされ穏やかに瞬く、夏の海。
ヒウンシティ、ポートターミナル、東口乗り場。
午前十一時、十五分前。

そこには普段停泊しているクルーズ客船とは異なる、巨大な旅客船が着航していた。
乗り場付近には大きな人だかりが出来ており、その出港を今か今かと待ちわびていた。

「えー、お待たせしましたー!チケットを持ったトレーナーの皆さまは、ゆっくりと前にお進みくださーい」

人だかりの中、比較的整然としていた人々が列を為し、ゆっくりと進み出す。

「横入りは出来ませんので後ろからお並びくださいねー。あ、ここからは二列でお願いしまーす」

「足元段差がありますのでご注意くださーい」

「カクタス号へようこそー」

係員のよく通る声が響く中、がやがやと列を連ねて進む人々。
彼等は本日、この船で行われる船上パーティに招待されたポケモントレーナー達であり、各々のチケットを手に乗船して行く。
そんな彼等を船上から眺める、数名のトレーナーやポケモン達が居た。

「お、ヒウン組が乗船し始めたな」

船上デッキから身を乗り出して眺めていた一人が呟く。
先に乗船していた数名の見物人たちは、デッキや窓から顔を覗かせ、港から乗船してくるトレーナー達に手を振り、迎え入れる。
彼等はヒウンシティより北東、サザナミタウン近くの港より乗船し、ここヒウンシティへとやって来たトレーナー達だった。
彼等もヒウンシティより乗船したトレーナ達と同様、これから始まる船上パーティの参加者である。

「あんまり身を乗り出したら危ないわよ、陽(はる)」

一人の少女が、赤い髪の青年へ声を掛けた。
真っ赤な長めの髪をなびかせながら、陽と呼ばれた青年は少女の方へと振り向き、デッキの手すりからその身を離した。

「ごめんって、ミツキ。でも、これでやっと始まるんだな。パーティ」

ミツキと呼ばれた少女は、能天気に返答する陽に対し溜め息を吐きながら、そうね、と返した。

「天気も良いし、絶好の航海日和ね」

空に高く上がった太陽は、今も燦々と海へ降り注いでいる。


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