エピローグ
50.***
「あーあ。腹いっぱいだな」
「海辺のレストランなんておしゃれだよね。美味しかったー」
「それにしても結局、何だったんだろうな…………。あの夢は」
「分かんない。でも、すっごくリアルな夢だった」
「リアルっていうか何ていうか。……まじで痛かったっつーか」
「むっくん、ピストルで撃たれてたもんね」
「いや本当にさ……。勘弁してくれ。夢で良かったぜ。全く」
「そうだねー」
「……」
「……」
「なんで俺達みんな、同じ夢をみたんだろうな……。同じ夢で、同じタイミングで起きて……」
「みんなで起きた場所、砂浜だったもんね」
「やべえよな……」
「やばいよねぇー」
「……」
「……」
「……」
「……」
「お、お、お、お客さーん!!」
「…………は?」
「えー……? なんだろ。さっきのレストランの……、コックさん?」
「はあっ、はあっ、はあっ。……きゅ、急に追いかけてきちゃってごめんなさい! あの、忘れ物ですよ! はい、これ! どうぞ!」
「えっ、あ、ありがとう……ございます……? ……なんだこれ」
「あれ。なんか見覚えがあるなー……。船のチケット? ボロボロだし、使用済みみたいだけど」
「あ、あれっ、お客さんのものじゃないんですか……? テーブルの上に置いてありましたよ? 僕それを見て、てっきりお客さんがカクタス号の見学者さんなんだとばかり……」
「は、はあ……?」
「ふぅーん?」
「それ、一昔前にカクタス号で行われた船上パーティのチケットなんですよ。まだ船が現役だった頃の」
「……」
「へぇー」
「えっ。あの、本当に知らないんですか? 大きな事件があって、結構なニュースになったんですけどね……。実は僕、当時その船の司厨員をやってたんですよ。懐かしいなあ……」
「……」
「……」
「だからてっきり、お客さんもその時に乗ってた人なんじゃないかなーって思ったんですよ。あの日は沢山のトレーナーさんを集めたパーティでしたからね。……ああでも、よく考えたらお客さん、若すぎますねえ……。もう、十数年も前の話だっていうのに」
「……」
「……」
「……」
「……」
「あのー」
「えっ。あ、はい」
「カクタス号って、どうやったら行けるんですかー?」
「おい、ゆの。行くつもりかよ」
「だってー。気になるじゃん」
「あ、あはは……。カクタス号なら、この一〇八番水道を真っ直ぐ行った先にありますよ」
「なんだ。近いじゃねえか」
「そうだねー」
「はい。今はカクタス号じゃなくて、『すてられぶね』って呼ばれてるんですけどね」
***
『客船の記憶、茫洋の彼方より』 完
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