date:13

「………そう、ですね。…では、お言葉に甘えさせていただきます」
「うん。それで、なにかあるかな?」
「マスターの、好きなものと苦手なものを教えていただきたいです」
「好きなものと、嫌いなものかあ……うーん、物や食べ物は特段そんなにないんだけどね…あ、でも甘いものは好きかな。ええと、あと私が嫌いなものは……家族、かな」
「ご実家、ということですか?」
「うん。私は…ええと、かなりざっくりとだけど、倫理観のない家族に育てられて…親が思う理想になるように、その為には精神的にも物理的にも色んなことをされて矯正されてきたから、あまり得意ではないかも。だから家族に似た存在がいると、少し怖いかも」

もう普段着にすることもないから、さらっと話したが、彼が昨日からずっと変わらなかった表情を変えた。申し訳なさそうな、悲しそうな顔をしている。

「…そうだったのですね。辛い話をさせてしまって申し訳ありません」
「え、いやいやいいよ…私が話したことだし、ね。あなたはきっと誰かに言いふらしたりしない、そう思ったから」
「…勿論、その通りです。あなたは大切な僕のマスターですから」
「うん。あ、でも習った防御魔術には感謝してるんだ。自分が犠牲になれば絶対誰かを救えるし。誰かのためになれるっていうのが、私はとっても嬉しいんだよね」

明るい雰囲気にしようと、へらりと笑って見せたつもりが、彼の表情は更に曇る。ああ、本当に人の気持ちを読むのは難しい。

「…僕が言うのも何ですが、自己犠牲は、あまり良いものとは言えません」
「…あは、そうだよね…そう、だよね…」

>> list <<