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彼女の魔力回路の不調は、前から知っていた。そして栄養状態がよくないことも、それ故に体力がないこともわかっていた。そして、どこか精神的に不安定なところがあることも、隣でよく見ていたからなんとなくわかっていた。だからこそ、今回の召喚は彼女が『マスター』であることに自信を持ついい機会だと思い、送り出したのだ。
だが、それが間違いだった。ダヴィンチさんの言葉に反してでも、止めておけばよかった。それが無理でも、同席すればよかった。できたことは多くあったはずだ。
僕は間違えた。少しの間違いを犯さなければ、彼女がこうなるのを防げたかもしれない。

そうして頭を抱えて何時間経っただろうか。疲れも空腹も感じず、何より彼女の側から離れる気になれず、そして結局その日もずっと彼女の弱々しい手を握って過ごした。

そして深夜、ふと手を握られる感覚で意識が浮上する。立ち上がり顔を覗き込むと、彼女はゆっくりを瞼を開き、サンソン、と僕の名前を呼んだ。

「マスター、」
「……サン、ソン?私、どうして………」
「…あなたは体調不良で倒れたんだ。召喚中に酷い頭痛があっただろう?酷い低血圧だったようだ。頭痛やめまいが起きることは珍しくない」
「………低血圧………そっか、私てっきり、私の実力不足で……って…」
「多少無理をしたことで体調不良を起こしたようだから、しばらく魔力を使うことは避けてくれ。わかったかい?」
「…わかった、ありがとう」

マスターが不安にならないよう、魔力の点には触れずに丁寧に伝えると、彼女はわかりやすく安心した。

「少しバイタルチェックをするから、起き上がるのは待っていてくれるかい?」
「うん。……その、サンソン」
「どうかしたかい?」

こちらを見て、何か言い淀む彼女に暖かく言葉を返す。彼女は辿々しく言葉を紡ぐ。

「…その、敬語…ないの、嬉しいな」
「………あっ……」

憔悴していたからか、思わず敬語が抜けてしまっていた。無礼を詫びようとしたが、彼女の嬉しそうな顔を見て、思わず黙り込んでしまった。

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