私と旅人の再会

電話をした翌日、水の下への出張勤務日。いつもの手続きをして監獄内へ入り、受付を通ると、いつだかに声をかけられた金髪の彼が目の前に立っていた。

「こんにちは」
「…こんにちは。何かご用でも?」

業務時間前でまだ時間はある。リオセスリと縁があるようだし、ただの旅人ではないようだ。まああまり邪険にするのも、と思いニコリと笑顔で応えると相手は少し動揺した様子を見せる。

「なんだこいつ…前回と全然態度が違うぞ!前はおいらたちが声かけても冷たい反応しかしなかったのに!」
「パイモン、声が大きい」
「ああ…前回は業務中だったので。ごめんなさいね。出張医の立場で仕事を喋っておしゃべりなんて、あまり褒められたものじゃないから」
「そ、そうか…忙しい時に声かけて、悪かったぞ」
「いいの。…で?今は何が聞きたいのかな?」

彼らはコソコソと何かを話し出す。どうやら何か相談しているようで、少し難しい顔をした後に2人でコソコソと話している。あれはこれはと指折り数えているが、もしかして思ったよりも長くなるかもしれないな、と思い時計を確認しながら待っていると、声をかけられる。

「聞きたいことがいくつか」
「答えられる範囲なら」
「まずは、あなたはどこから来てる誰かのかを知りたい」
「郊外に小さい医院を構えてるただの個人医。とある縁があってここに週に数日派遣されてるの。怪我をした時は声をかけて。名前はリゼン」
「リゼンさん…その『とある縁』について深く聞いてもいい?」

探るような目でこちらを見てくる彼らに『慣れている』という印象を受ける。この様子だとここに来てから色んな奴らにこうして聞き回っているのだろう。全てを知りたがるだろうが、今までの話を全て話すにはなかなか面倒くさい。

「…あなたたち、そんな感じでいろんな人たちに話を聞いているんだったら私についてもある程度聞いているんじゃない?あいつ…リオセスリと私の過去についても」
「……噂程度にしか知らないけれど、ある程度は」
「まあ、大体その通り。ここにいる奴らには、私のここでの過去については出回ってるからね。聞くまでもないんじゃないかな」
「じゃあ、今のリオセスリとの関係は?」
「………それも、他の囚人から聞かなかった?」
「いや、はっきりしたものは聞けなかった。過去について話してくれた人にも今は放っておいてやれ、って言われてしまって…」
「ああ……じゃあ、公爵に聞いてみたらどうかしら」
「やあ、旅人、リゼン。何をしているんだ?」
「っ!?」「わぁ!!??」

彼らの後ろから歩いてきていたリオセスリに気づき、面倒になってきた私は、彼に投げることにした。
びっくりする旅人と白いふわふわしたものは、リオセスリに向けてびっくりしたり怒ったり様々な反応を見せ、彼はいつも通り宥めている。そんなやりとりを眺め、また長くなりそうだと思い時計を見ると、就業時間が近づいていた。

「じゃあ、私はもう行くから。失礼」
「あっ!た、旅人、大丈夫か…?」
「…うん。聞きたいことは、聞けたから」
「…随分仲良く話していたみたいだな?」
「聞かれたことに答えてただけ。後はあんたが話してあげて」
「勝手に話していいのか?」
「勝手にして。じゃあね」
「待ってくれ」

パシッと手首を掴まれ振り返る。目線で何か、と尋ねると掴んできた少し荒れた指先がするりと滑り、私の手を軽く包み込む。また後で、と小さく囁かれ、思わず動揺する。
動揺と彼の手をパッと振り払い、そのままひらりと手を振り。振り返らずに歩き出すと、彼が後ろでフッと笑った気配がした。

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