最後に見た『貴方』の顔は、らしくもない今にも泣きそうな顔だった。

「―――名前!!」
「れい、くん…」
「…名前、しっかりしろ名前!」

ねえ、いつもみたいにドジしたなって、困ったように笑わないんだね。
ねえ、いつもみたいに冷静になれって、怒らないんだね。

「……れ、い…」
「無理に喋るな!くそ……救急車はまだ来ないのかっ!」
「零、くん…」
「もうすぐだ…もうすぐ救急車が来るから、だからもう、」
「零君…約束、守れなくて…ごめん、ね?」
「っ、」

ずっと傍にいるよって、約束したのに守れなくてごめんね。

かすむ記憶のどこかにいた


title.金星

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