勢いよく部屋を飛び出す。どうやらここはマンションの一室だったようで、少し遠くの方にあるエレベーターホールに向かって走る。
早く、早く、早く。と意味もなくエレベーターのボタンを連打して、1秒でも早くエレベーターが来て欲しかった。
エレベーターが到着したのと、この階の部屋の玄関扉が開いたのは、ほぼ同時だったと思う。
「ーーー待てっ!!」
追いかけて来たのは、零君によく似たあの人。追いつかれちゃ、駄目。
またエレベーターの閉ボタンを何回も押す。早く閉まって。早く。
結局、あの人が追いつくよりも、エレベーターの扉が閉まる方が早かった。
「ーーっ、くそ!」
エレベーターの扉が閉まって動きだしてホッとしながら壁に背をついた。だけど、のんびり何てしていられない。多分、あの人はもう一機あったエレベーターですぐに追い掛けてくだろう。
エレベーターが一階へと着き、マンションから飛び出す。体が痛いとか、そう言えば裸足で飛び出してきちゃったなとか。
こんな格好で会いに行ったら、無茶するなって、零君怒るかな?
「ここ…どこなんだろう…」
マンションから飛び出したはいいが、ここが何処だかわからない。とりあえず大通りに出れば道路標識とかで分かるかもしれない、と大通りへと走る。
周りの人たちの視線が私に注がれているのが居心地が悪かったけど、仕方ない。誰だって、身体中包帯だらけで素足で走っている人間を見たら一度は視線を向けてしまうものだ。
大通りに出て、辺りをキョロキョロと見回す。目に入ったのは、バスの停留所。書かれていた停留所の名前で今自分がいる場所が何処なのかを把握した。
「…米花、町…」
どうしよう、と思う。ここから歩いて警察庁へ向かうには遠い。怪我をしている今、ちゃんと辿りつけるか不安だ。零君の家にしても、ここからじゃやっぱり距離がある。何よりも、零君の家へ向かうよりも警察庁へ向かう方が彼に会える確率が高い。
あの人は、私が丸三日眠っていたと言っていた。宗教団体と犯罪組織の密会していたのは金曜日。あの人の言葉が本当なら平日である今日は、零君は仕事中である筈。
「タクシー……拾って、警察庁まで行くしかない、か…」
手持ちが無い中でタクシーに乗るのは気が引けるけど、零君に会うのが第一。タクシー代は申し訳ないが警察庁に着いたら誰かに立て替えてもらおう。そうと決まれば、あの人が追い付いてしまう前に、早く行かないと。
「タクシー…どこ…?」
タクシーを探しながら、ふらふらとした足取りで再び歩き出す。体中が痛かったけど、それで構わなかった。
夢の足跡
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