「…ケット・シー、いまの見た?」

「はい、ばっちりや」


えらいこっちゃ、と目を覆うジェスチャーをするケット・シーと共に、ゴールドソーサーの観覧車乗り場でこそこそと身を隠す

タークスの一員であるが、何やかやあってクラウド達と行動を共にするようになりしばらくが経つ。
すっかり一行に馴染んだは、ゴールドソーサーに着くやいなや、ケット・シーをデブモーグリから引っ張り下ろすと小脇に抱えて、あちこちのアトラクションを連れ回していた。

次は観覧車!とラウンドスクェアにやってきた一人と一匹が目撃したのは、観覧車に乗り込むクラウドとエアリスの姿だった。


「ティファには秘密にしとこっか…」

「せやね。こんなん最重要機密や」


二人を乗せたゴンドラが登って行くのを見守ると、仲間内での複雑な三角関係を思い、顔を見合わせ頷き合う。
陳腐なスパイごっこをしているようで、なんだかおかしくなって笑った。



「見て!花火!すごい、綺麗だねえ」

「ホンマやねえ」

「ミッドガルの夜景も綺麗だと思うけど、これはまた味わいが違うなぁ。きらきらしてる」


観覧車に乗り込むと、は窓に両手を張り付け、その外に広がる景色を夢中で眺めていた。
花火が上がる度に弾けた光の粒がの大きな瞳に映り込み、その横顔をきらきらと彩る。
ケット・シーは、夜景よりこっちのほうがずっときれいや、と思った。

子供のようにはしゃぐに、ふとした疑問を投げかける。


さん、ゴールドソーサーは初めてですの?」

「来るのは初めてじゃないけど…仕事でしか来たことないから、これに乗るのは初めて」

「じゃあ、一緒に乗るのも、ボクが初めて?」

「ふふ、そうだね」


ケット・シーのなんだか可愛らしい問いかけに、目を細めて笑う。
はふと先程の光景を思い出し、旅の仲間の恋模様に想いを馳せる。


「…クラウドはどうするつもりなのかな?」

「ずーっとこのまま、って訳には、いかへんやろなぁ」

「難しいねえ…」

さんはどうなん?」

「ん?」

「こういうの、一緒に乗りたい人、おったんやないの?ボクなんかと…」

「私、ケット・シーと乗りたかったよ?」

「え?」

「ケット・シーのこと、好きだからね」


悪戯っぽく歯を見せて笑うのその言葉に、ケット・シーの動きが止まる。
数拍おいて、意を決したように言葉を紡ぐ。


「ボクも…ボクもさんのこと、好きや」

「ほんと?ありがと」


無邪気に笑うには知る由もない。

それは、目の前にいるケット・シーの言葉ではなかった。
『好き』の意味もきっと伝わってはいないだろう、と“彼”は密かに肩を落とした。



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