華やかな末路



淡々と、コクリアの階段を下がっていく。わたしの前には平子さん。後ろには0番隊の子供達。0番隊は皆黙って目的の場所へと歩を進める。
あの後、泣き腫らした目をしたまま平子さんとも打ち合わせをした。私の上着のポケットには薄っぺらい辞表が入っている。

私は貴将さんの最期を見て、CCGを辞める。



「何でわたし達は生まれたの?」

昔、まだ貴将さんも私もCCGに入る前。陽の当たるあの真っ白で真っ黒な庭の端っこに私達はふたりでいた。貴将さんはよくそこにいたから、私も自然とそこに通っていたのだ。

「意味なんて、無いよ」
「え、なんで?」
「失敗作だから」

まだ自分が和修の分家と知る前。自分はただの失敗作と知る前に、彼に一度だけ聞いた。すごく哀しそうな眼をして彼は一言だけ失敗作だと語った。

「意味ないの……私達……?」
「……うん」
「でも、そのうちできると良いね」
「え」

あの時はただ彼を励ますつもりで言っただけ。でも今は違う、本気で思う。

「わたし達にも意味ができる日がくればいいね」

そう言ったら幼き日の彼は微笑を浮かべて小さく頷いた。あの時から大人びた雰囲気のお兄ちゃんだった。



「意味が、あったんですね……」

遠くに、横たわる者とそれを見ている者がいた。横たわっているのは貴将さんだということを認識して、目頭が熱くなる。それと同時、安心した。
ハイセは、"カネキケン"は。貴将さんの賭けに合う人だったという事だ。もし、違ったなら反対に貴将さんがここに立っていただろう。
カネキは私達を見て、一瞬警戒したが私達に戦う意志はなく彼に付くと言えば私達を受け入れた。
子供達が貴将さんにお別れを言って泣いている。

「……平子さん、ちょっと先に行ってて来れませんか……?」

そう言えば、平子さんは「すぐに合流しろ」と一言言ってハイセと子供達とで更に奥へ進んでいった。

「貴将さん……」

私は貴将さんの傍らに座り込む。貴将さんのまだ少し温かみのある頬に手を伸ばす。
穏やかな顔をしているのを見て、私は安堵した。

「私も、そのうちそっちにいくから」

ちょっとだけ待ってて。
貴方の代わりに、カネキケンがこの世界を変えてくれるのを私は見届ける。それまで、意地でも貴方の処にはいけそうにない。見届けなきゃ、貴方に見せる顔がないもの。
私は彼に最後のキスを送る。しばらく御墓参りもできない。暫しのお別れ。

「大好きですよ、ずっと」

これからも、ずっと私は貴方だけのものです。



End
また無機質な明日を迎えるだけ
2017.2.23
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