だって涙が出るほど優しいから
「…ユイさん、どうしたの?」
机に突っ伏してる私。
今日起きたらどうも身体がだるくて、熱っぽくて。頭が働かないから何もできなくてしばらくこうしているのだ。
「風邪でもひいた…?」
「ん……、かもしれない…」
ウタさんは私にブランケットを肩に掛けてくれる。
「寝てた方がいいんじゃない?こんなとこで寝てたら悪くなるよ」
「やだ…」
風邪をひいた時、ひとりになると寂しくなるのが好きじゃなかった。ベッドで大人しくしてるより、ウタさんの姿が見えるところにいたい。
ウタさんの手が私の手を握ってくれる。ウタさんは椅子をもうひとつ持って来て私の近くに来てくれた。
「なんか欲しいものある?今日ご飯食べたの?」
「……んー、食べてない」
食欲もないから朝も作ってない。
「なんか買ってこようか」
「ううん、いいよ……」
身体を起こすとウタさんの膝に移動する。ウタさんの胸にぐりぐり頭を押し付けると、彼は優しく頭を撫でてくれた。今日のウタさんは特別優しいな。おでこを当てられると「やっぱり熱いね」と言われた。
「……んっ」
額や頬、唇に優しい啄ばむ様なキス。元々熱のせいで働かない思考だけど、ウタさんのキスのせいでもう蕩けそうになる。
鼻先にウタさんの顔がある。彼は私の顔を見てニコリと笑った、何がおかしいのか首を傾げているとこんなことを言い出す。
「弱ってるユイさんも可愛いって思っちゃってさ」
「……っ」
あぁ、もう。熱くてしょうがない。
ウタさんに抱き締められて、私も彼の首にしがみ付く。ウタさんの私への労わりにいつもこんな事はないのに、なんだか泣きそう。これも全部風邪のせいで弱っているからだ。冷たいウタさんの手が頬を包んで気持ちが良い。
「ねぇ、ユイさん。やっぱ寝てなよ」
「え……」
「眠るまで僕が一緒にいてあげるから」
……それなら良いかな。
ウタさんは私をベッドまで連れて行って本当に私が眠りに着くまで手を繋いでいてくれた。
それから私が目を覚ますともう夕方になって、私のおでこにはいつの間にか冷えピタが貼ってあった。ここまで寝ちゃうなんて本当に調子悪かったんだな。汗もいっぱいかいたからか、少し熱も下がったみたいだ。
ウタさんの姿が無くて、探しにベッドから出る。キッチンの方に行くと良い匂いが漂ってきた。これはウタさんの"食事"の用意じゃない。
「ウタさん、何してるの?」
「あ、起きたんだ。大丈夫?」
「うん、だいぶ。……料理、ウタさんできるんだ」
「レシピ見てやったら、意外とできるもんだね」
器用なウタさんはシチューを作ってくれたらしく、良い匂いに私の食欲もどうやら回復した。私のために食事まで作ってくれたことが嬉しくて、ウタさんの背中に抱きつく。
「元気になったみたいだね。熱もさっきよりは下がったかな」
私のおでこにあるぬるくなった冷えピタを取ると、代わりにウタさんの手が私のおでこを包む。
「うん、ウタさんのおかげ」
ウタさんの看病のおかげか、次の日には私は完全に体調が治った。もう少し、ウタさんに甘えたかったのが本音だったけど。
心がふわふわ
(んっ、ウタさん美味しい!)
(それは良かった)
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