唇にご用心


仕事もねぇし、家に居ても暇だ、ということでかぶき町をぶらぶら散歩していた。騒がしくて品もねぇけど、逆にそんなとこが居心地が良かった。

さて、どうすっかなー…。
パチンコか、競馬か…。

(……違ェな、そうだあわよくば…)

「あ、銀ちゃん!」

今日俺は運があるらしい。パチンコや競馬で使わなくて良かったと、マジで思った。あわよくば会えないかと思っていた人間に会うことができたからだ。

「おう、アヤ。帰りか?」
「うん。銀ちゃんは、お散歩?」

まだ付き合い始めて数ヶ月のアヤは、俺を見つけるなり嬉しそうな顔して駆け足でこっち
に向かってきた。アヤの職場である甘味処に常連になったのが出会いだった。可愛い店員いるなーぐらいに思っていたら、まさかの告られたもんだから耳を疑ったね。俺は正直好きになられるようなことをした覚えはないんだが…。

「あ、そうだ。銀ちゃんお花見行かない?」
「花見?今から?」
「うん、ちょうど満開の場所があるの。興味ない…かな?」
「……」

――上目遣いを自然にやらないの、アヤちゃん!!

なにこの子、職場でもこういうこと自然とやるの?銀さん心配なんだけど、彼氏の気持ち通り越してお父さんの気持ちなんだけど!!

「銀ちゃん?」
「行く、行きます、行かせてください」
「ホント!?良かった、行こう!」

いい年してここまで惚れ込むとはなー。
毎回思うんだが、どうしてこんないい女が俺に惚れてくれたのか分からない。いや、ありがたいよ?優しいし、気ィきくし、銀魂女子にはあるまじき人格だよ。

しかしまぁ、アレだ。
男としてはそろそろ進展が欲しいわけで。アヤは大和撫子なとこがあるからなー。

そんなことを考えているうちに、かぶき町を少しでたところの花見の場所に着いた。

「ね、満開でしょ?」
「おー、スゲェな」

桜よりか、今はアヤの顔を見ている方が俺は楽しめる。こんな嬉しそうな顔されちゃかなわんなーと思う。

――怒られっかな。
――いや、恥ずかしさの方が勝つか?

「そうだ、今度みんなで――」

振り向いたアヤに顔を近づけた。アヤが息を飲むのを感じた。可愛いことにあんまし慣れてねーのな。名残惜しいがアヤのから離れると案の定、顔を真っ赤にして突っ立ってた。

「みんなはいらねぇ。またふたりでくりゃいいだろう」
「……う、うん…っ…」

隠しきれないほどに動揺するアヤに思わず吹き出すと、キッとちっとも怖くねぇ目で睨まれた。

「アヤチャンよー、チューくらいでそんなんなってっともたねぇぞ?」
「え……っ?」
「これからもっとイイコトしてくんだからよー」
「えっ、っ、うぅ……」

マズイなー。
注意したそばから、俺の方がもつのか不安になってきたわ。

何もいらないと思ってたんだけど
(欲張りなんだよなー)
(?)
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