またひとつ、忘れたくない思い出


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貴将さんとクインクスのおうちにお邪魔した。クインクス班は半喰種のようでCCGの中にも批判し、白い眼で見る人も多い。けれど実際話せばみんな良い子ばかりだし、みんな事情を抱えていることを私は知った。

そして私はそこで初めて貴将さんとお付き合いをしていることを人に話した。

「いやぁーしかし、有馬さんに恋人がいたなんて本当に知りませんでした!」
「あんまり話さないようにしてるの。業務に私情を出すのも迷惑でしょ?」

まずはハイセ君に話してみた。貴将さんは今、隣の部屋でクインクスの子達とゲームに興じている。話してみたらやっぱりびっくりされたけれど、ハイセ君は祝福してくれた。

「で?どちらから言ったんですか?」
「ハイセ君…、そんな乗り出さないでよ」

ハイセ君がテーブルを挟んでぐいぐい私に聞いてくる。まさかそんなに興味があるなんて思わなかった。でもまぁ、ハイセ君からしたら貴将さんはお父さん的存在だって言ってたものね。

「貴将さんがね、言ってくれたの」
「へえー!あの有馬さんが!!」
「でもね、それを言われてから貴将さんから特に何もないから私達本当に付き合ってるのかなーって心配になった時もあったの」
「あー、想像つくなー」

やっぱりそうなんだ。私も今ではちゃんと彼の性格を理解して、不安になることは無い。
そうしていると、有馬さんが部屋に入ってきた。

「ハイセ、みんなが呼んでる」
「え?なんだろう?」

ハイセ君が急いであちらの部屋に行ってしまった。貴将さんとふたりきりになると少しまだ緊張したりする。

「何話してたの?」
「貴将さんと付き合ってます、ってハイセ君に」
「ふたりきりで?」
「えっ」

貴将さんに腕を掴まれ、立たせられてた。そのままスポリと彼の腕の中に閉じ込められて、私の体温が急に上がるのを感じた。

「あの、貴将さん…?」
「俺だって不安になるよ、いくらハイセだって」

――うそ、妬いてくれたの?
あまり感情を表情や行動に移さない貴将さんがこんな風にしてくれるだなんて、驚きより嬉しさの方が増してくる。

「何で喜んでるの?」
「よ、喜んでませんっ」
「……顔が緩んでる」
「ゆ、緩んでません!!」

こんなやり取りをしながら一向に貴将さんは私を解放してくれない。本当にこの人に私は愛されている、そう思っていいんだ。
顔に貴将さんの大きな手が伸びてきて私は導かれるまま唇を彼のそれに合わせた。

「コハルは俺のこと好きだよね?」
「ふふ、もちろん」

CCG最強の特等捜査官だって妬きもちするんだなぁ。

君の香り、君の温度
(ハイセ、何見てるんだ?)
(うわ!!)
(えっ、ハイセ君っ!?)

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