キミとどこまでも


私は鈴屋准特等の部下で一応、上等捜査官の地位にある。一応、というのも准特等のほぼ強制のような推薦状が通ったというのもあるのだけど。

「大丈夫です、コハルはできる子ですよ」
「はぁ…」

そして目の前に座ってお菓子を食べているこの人が私の恋人なわけで。ひとつだけ准特等の方が年上だけど、准特等は幼く見えた。だから、「付き合って下さい」なんて頭を下げられた時には驚いたどころじゃなかった。

ただ、付き合ってみるとすごく良い人で。
やっぱりどこか子どもっぽいけど、捜査官としては立派だったし私を大事にしてくれた。

「今日はコハルに会わせたい人がいるです」と任務中だというのに、私達は病院に来ていた。

「准特等、ここには何をしに来たんです?」
「什造です、あと敬語イヤです」
「あっ、えっと…、什造さん」
「お見舞いです」

――あぁ、だから花束を。
小さな、可憐な花束を彼は大事そうに持っていた。
什造さんはひとつの病室をノック無しで入った。元気な声で「篠原さーん」と声を掛けながら。

――篠原?
どこかで聞いたことある名前。
病室にはベッドに横たわっている大柄な男性がひとりいた。でも、その人はいろいろな管が機械と繋がっていて…。

「コハル、この人が篠原特等です。僕の上司です」
「篠原…特等」

思い出した。
「不屈の篠原」で有名な捜査官じゃないか。

そうだ、だけどいつかの梟戦で重傷を負って意識が戻らないとどこかで聞いた。知らなかった、什造さんの上司だったんだな…。

「篠原さーん、今日は僕の恋人を連れてきたです。可愛いーでしょー?」
「ちょっ、ちょっと什造さんっ!」
「そして僕のお嫁さんになる人です」
「……へ?」

什造さんはニコリと笑って、私の方を向き「嫌です?」とちょっと照れながら言う。
――お嫁さん?
プロポーズをされた、ということでいいんだろうか?

ジッと大きな彼の瞳は私の答えを待っている。私は「よ、よろしくお願いします…」
と頭を下げた。

「じゃあ、篠原さんに挨拶するです。篠原さんは僕のお父さんみたいなもんですし」
「えっ、お父さん!?…えと…」

いろいろと唐突すぎて追いつくのに大変だ。まぁ、唐突なのはいつものことだけれど。
篠原さんのベッドの脇に移動して、篠原さんの顔を覗く。意識は長らくないのだろう。けれど優しくて、穏やかな顔をしていた。確かに、什造さんが懐くのも納得がいくかもな。私も一緒に任務をこなしたり、捜査官としていろいろ教えてほしかった。

「はじめまして、篠原特等。本宮コハルといいます。私がちゃんと什造さんの隣にいますから、安心して下さいね」

そう言うと什造さんが「僕が守るです」と少しむっとして答えていた。

捜査官として、お嫁さんとして彼の側にいよう。

ほんのり温かい左手
(いやー、緊張しましたー)
(え?)
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