「駅前に新しいカフェができたんだって」
「へー、そうなんだー。今度一緒に行こっかー」
「うん」

私と及川の関係は何だろう。クラスメイトよりも近く、友達よりは遠い。恋人でもないし、部活の仲間でもない。だけど、こうして一緒に帰ることもあれば遊びに行くことだってあるけれど、二人の関係はとても脆く曖昧で、少しでも外部からの刺激があればすぐに崩れてしまうだろう。私の気持ちは勘のいい及川なら気づいているはずだ。でも何も言わないのはきっと彼に気持ちがないから。

「今日はさー、岩ちゃんがねー」

とても楽しそうに部活の出来事を話す及川は、私の方を見ない。始めはメールも盛り上がったし、遊びの誘いだってあった、目をみて私の話を聞いて、優しく笑ってくれた。それがいつからだったか、私の話に上辺だけの返事をするようになった。メールの返信が遅くなって、段々と返事がなくなった。私に時間を合わせてくれなくなった。口約束が多くなった。思い返せばキリがない。なんで?どうして?なんて聞ける度胸もなく、私は及川にすがり付いていた。彼が私に興味をなくしているのも分かっている。それとなく距離を置こうとしているのも。

「あ、あとさ、この間言ってた遊ぶ約束なんだけど、どうしてもハズせない用事が出来ちゃってさ!」
「えっ、そうなの?部活?」
「うん、そう!ゴメンね、また今度でもいい?」
「全然いいよ、部活頑張ってね」
「ありがと、頑張る!」

嘘つき。めんどくさくなったって顔に書いてある。私は純粋に残念な振りをして、笑って見せる。それすら及川にはお見通しなんだろう。薄っぺらい社交辞令が見え見え。チクリチクリと心臓が痛むのを感じながら、それでも横を歩くことを止めない私。
彼女でも友達でも仲間でもない、ただのーーただの、何だろう?迷惑な女だろうか。それともストーカー?そう思われていたら、なんて滑稽な女だ私は。及川はそんな私を見て、嘲笑っているのかもしれない。
でも、好きなんだ。諦められないんだ。この状況が振られるより辛くても、振られる勇気が持てないの。
及川が何も言わないなら、私はまだ側に居てもいいでしょう?

「…」
「…」

増えた沈黙。チラリと横目でみる及川の顔は無表情。この沈黙は決していい雰囲気ではないことが嫌でも分かる。
言ってよ、いやだ言わないで。私は心の中で泣いていた。
及川は酷い。私に気がないなら迷惑だって、好きじゃないって言えばいい。

何も言わない及川に、私は今日もついていく。何にも気にしていない振りをして。



ほら、横に居てもまた辛くなってる
(もう限界なんてとっくに超えてる)

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