正則と私は、幼い頃から秀吉様のもとで育った云わば兄妹のような関係だった。武に秀でた正則に負けじと、私も武を磨き今では隊を率いて天下分け目の戦に出陣している。三成を憎む正則は当然家康側につき、私は三成側についた。そして、今目の前には正則が居て私と対峙している。
「…お前と槍を合わせるのは何度目だろうな」
「知らない、数えてないもん」
「確かに、お前に稽古をつけたわしが覚えてねぇんだ。お前が覚えてるはずねぇな」
豪快に笑った正則に、家臣たちが一瞬ひるむ。相変わらず頭を使うことが苦手らしく無駄に相手を威嚇するくせは治っていないらしい。案の定、正則を恐れた家臣たちは私に撤退をすすめてきた。が、退くわけにはいかない。私が退けば西軍が不利になるからなんて理由ではなく、ただ単に退くのが気に障るからだ。
「これは稽古とは違う。命掛けの勝負だ。今なら見逃してやるが…」
「馬鹿言わないで、私が退くわけないでしょう」
「だろうな。それでこそわしが見込んだ女!」
「…」
「だが残念だ、お前が三成の肩を持つとはな」
ほんの少し寂しそうに笑った正則を、今度は私が笑いとばした。やっぱり正則は頭を使うことが苦手なようだ。どうして、西軍=三成の肩を持つとしか見れないのだろう。私は別に三成に味方したかったわけじゃない。
「さあ、勝負を始めましょうか」
「手加減などせんぞ」
「当たり前」
言うと同時に馬を走らせる。お互いの槍がぶつかるまで後、少し。
戦う理由
(あんたと戦いたかったから、)(ではダメだろうか)
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