「吉継様、今夜は星が綺麗です」
「そうだね」


明日、天下を賭けた大戦が始まる。こうしてゆったりと夜空を眺められるのも、最後になるかもしれないと思うと無性に泣きたくなった。吉継様は分かっていらっしゃるのだ。この戦に勝機がないこと。それでも友人である石田殿のために、ボロボロの身体で戦に出ると言う。何度反対しようが、吉継様は石田殿を見捨てることは出来ないと首を振るのだ。そんな吉継様を想うあまり、私は溢れる涙を止めることができなかった。


「名前、泣いているんだね」


もうほとんど見えていないはずの双眼は、ぼんやりと私を捉える。長い間吉継様に仕えているが、彼は空気で私の状態が分かるという。急いで涙を拭うと吉継様の優しい声が私を呼んだ。


「おいで、」
「吉継様…」
「名前は優しいね、私のために泣いてくれるなんて」


吉継様の隣に座ると、大きな手で私の頭を撫でてくれた。ついに涙腺が決壊してしまった私を、彼は優しく包み込む。何て優しい腕なのだろう。この人が居なくなったら、私はどうなってしまうのか。吉継様の腕の中、私は赤子のように泣きじゃくった。嫌だ、離れたくない。この温もりがなくなってしまうなんて考えられない。


「名前、私は無事に帰ってくると約束はできない。もし私が帰ってこなかった時は、好きにしなさい」
「吉継様…私、吉継様が居ない世界なんて死んだも同然です。だから…」
「そうか、私は嬉しいよ」

より一層強く抱きしめられ、複雑な感情が渦巻いた。嬉しいのか悲しいのか寂しいのか。ただ一つ、明日がこなければいいと切に願う。


決戦前夜、君に触れる


朝、隣に感じていた温もりがないことで私は目を覚ました。

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