ふ、と思った。
この大空はどこまで続いているのだろう、と。
追いかけても追いかけても決して終わりなどなく、追いつくことも追い越すことさえも叶わない。
あの広い空にもし、もしも行けるというなら私は──。
「名前殿、意識をしっかり保たれよ!今、手当て出来るものを呼んで参ります故。」
「…。」
近くにいた名も知らない味方の兵が、そう声をかけて立ち去った。
だけど、きっと私は助からない。
未だドクドクと溢れ続ける血液が、地面に地溜まりをつくっていく。
既に意識は朦朧としている。
広い関ヶ原の地の片隅で、仰向けに寝転がることしかできない私を太陽は優しく包んでくれていて驚くほど心は穏やか。
傷だらけの体はズキズキ痛いけれど。
「三成様…どうかご無事で。」
そっと呟いた言葉は、誰に届くことなく消えた。
安否どころか消息も分からない彼の身が心配だ。
つい先刻、私の頬に触れた彼の顔が離れない。
彼には、どうか死なずに生きていて欲しい。
私なんかのために涙を流しながら生きろと言ってくれた優しい方だから。
私はどうやら生き延びることは叶わないようだけれど、三成様の役にたてて逝けるのなら悔いはない。
「私は幸せです…。」
武士として戦で死ねることは至極の喜び。
三成様に仕えられた十数年間も、誇り高いこと。
急激に重くなった瞼を素直に閉じれば、先程まで広がっていた青空がまだ焼き付いていた。
clear
(あの広い空にもし、もしも行けるというなら、私は…)
***
1600年9月15日 関ヶ原の戦い
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