私は耳を疑った。コレって幻聴?いやきっとそうよ、だって、ねぇ?あの高杉晋助の口からまさかそんなこと。
「ごめん、聞き取れなかったんだけど…もう一回言ってくれる?」
「だからピアノの弾き方とツルの折り方を教えてくれ」
ほーらね、やっぱり幻聴じゃね?ピアノって…ツルって…高杉に最も似合わないもん。想像したら面白くて、つい声を出して笑ったら真面目な顔でふざけんなって叩かれた。いや、ふざけてないし。ていうか、こっちのセリフだし。
「ていうか急に何言い出してんの?新手のドッキリ?」
「違ェよ、大学の入試で必要なんだよ。だから教えろ」
「いやいやいや、入試って…高杉就職じゃないの?!」
「あぁ?誰がんなこと言ったんだ」
「いや、私の勝手な想像ですけど」
だって授業あんま出てないし、だいたい不良イコール就職みたいな方程式が私の中にあったからさ。高杉が大学行ってまで勉強するとか思わないじゃん。ていうか、今更だけど入試にピアノと折り紙?何すんの?まさか子供が面接官じゃあるまいし。
「あと二週間しかねぇんだよ。出来れば弾きながら歌いたい」
「ぶはっ、ありえねー!ピアノ弾きながらコブクロでも歌うの?ありえねー…痛っ」
「コブクロじゃねぇ!歌うっつったらカエルのうたしかあるめェ」
「…」
え、てっきり笑うなって殴られたと思ったんですけど。まさかのコブクロじゃなくてカエルのうたかよ。何か高杉変だよ、熱あんじゃないの?昨日腐ったものでも食べた?まさか失恋?思いつく限り訊いてみたけど、全部違うらしい。そして頭大丈夫か?と言われてしまった。…いや、お前がな!と言えたらスッキリするんだろうなァ。
「後でお前ェの弟貸してくれ」
「かっ貸すの?ちょ、マジ何する気?」
「決まってんだろ?一緒に歌うんだよ…カエルのうた」
「マジでか…歌うって」
高杉…アンタ一体何になりたいの。ピアノ弾きながらカエルのうたってまるで、まるで、アレじゃないの。世界一黄色いエプロンが似合って、子ども達を褒めさせたら右にでるものは居ないという…。
「ねェ、もしかして高杉の夢って…」
「幼稚園の先生しかあるめェ」
幼稚園の先生になりたい高杉晋助
(よりによって世界一似合わない職業を…)(それより早くピアノ教えろ)(…はい、)
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