大きなクリスマスツリーにキラキラと輝くイルミネーションが街を彩る聖夜。甘いムードを醸し出しているカップル達。そう、今日は私の一番嫌いな日…クリスマスだ。ちなみに二番目に嫌いなのはバレンタイン。舌打ちしたくなるくらい浮かれているカップル達を避けるように、私は表通りから外れて裏通りを歩くことにした。表のイルミネーションとは違い、スナックやいかがわしい店の看板で輝いている。こんな日にこんなところに居るのは独り身の男が主で、私のような女はほとんど見当たらない。それでもそれなりに混んでいるあたり、寂しい人はたくさん居るんだろう。私は別に寂しいわけじゃないけど。

「そこのお嬢さん、この服着てバイトしてみないか?」
「は?」

どこのエロおやじだ、と軽蔑を込めた眼差しで睨んでやる。刹那、開いた口が塞がらなかった。

「桂!」
「お前は土方の…ガールフレンド」
「違うから。副長補佐だから。ていうか、何してんの?」

真っ赤な衣服と帽子に身を包み、お店の看板を持っている桂は「呼び込みだ」と言った。しかも私に差し出している衣服は桂の着ているソレと同じ。どうやら本当にアルバイトしているようだった。

「何やってんだか」
「貴様こそ仕事をサボってこんなところで何をしている」
「今日は非番なんですー。せっかくのクリスマスをあんなムサい男共と過ごすのはまっぴらゴメンなの」
「それでこんなところをうろついているのか。寂しい奴だな」
「呼び込みしてるテロリストに言われたくないんだけど」

寂しい奴と言われるのは気にくわない。これでも言い寄ってくる男は居るし、それを断っているのだから断じて寂しいわけではない。桂は、そんな私の心情を知ってか知らずか、フンと鼻で笑った後テロリストではないと否定した。

「どうせ暇なのだろう?お前も店に貢献してはどうだ」
「何で私が…ていうか指名手配犯と普通に会話してる時点でヤバいんですけど」
「今日は非番なのだろう?」
「そういう問題じゃないし」

いくら非番だからといって公務員がいかがわしい店の呼び込みなんてヤバい。ましてや指名手配犯が隣に居るのに普通に喋ってること自体大問題だし、見つかったら切腹モンなんですけど。

「とりあえずこのサンタ服を着て、夢と希望を配ろうではないか。手始めに三十枚から」
「何これ」
「クリスマスプレゼントだ」

プレゼントという名のお店のサービス券を渡され、私は盛大な溜め息を吐いた。本当にしょっぴいてやろうか、このハッピー野郎。グシャリとサービス券を握り締めれば、桂は今日初めてそのすかした顔を歪めた。

「疲れた…こんなに疲れるクリスマスは初めてだわ」
「そうか?俺はこんなに楽しいクリスマスは初めてだがな」

誰のせいで疲れてるとおもってんだ、コノヤロー。思わず言いかけた言葉をのみ込む。桂ってこんなにキレイに笑うんだ。配っているのは夢や希望なんてものではないというのに。

「何かバカらしくなった…どうせ一人だし今日はアンタに付き合ってあげる」


今夜だけは関係ない
(見つかったら脅されましたって言うからね)(それなら見つからないように休憩しにいかんか?あのホテルはどうだろう)(いやいや、そこまで付き合う気ないからね)

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