例えば、クラスでも可愛いと評判の彼女と、サッカー部のキャプテンでカッコイイと評判の彼が二人で歩いているのを見かけるとお似合いだなって噂になって、羨ましがられる。おまけに美男美女だなんて囃し立てられて、公然でイチャイチャしてもひゅーひゅーだなんて冷やかしが入って。
先生たちからは青春だねぇ、と呟かれる。

例えば顔も成績も普通で元気だけが取り柄の彼女と、顔はそこそこいいのに少し乱暴で子供っぽくて運動神経だけは抜群にいい彼が二人で歩いていても呼び出し?だなんて声を掛けられる。ましてや、ひゅーひゅーどころか先生からのコラッという怒声ばかりを頂くはめになり、公然でイチャイチャしてもいないのにモテたいオーラを纏った男子どもにリア充爆発しろだなんて暴言を吐かれる。
この違いはいったいなんだというのか。





「赤也なにみてんの」
「今下でカップルがイチャイチャしてるの見てる」
「まじかよ!早く言ってよ!」

お昼ご飯も食べ終わって暇だから屋上行こうぜーなんて赤也に誘われたので、このくそ寒いなかマフラーぐるぐる巻きにして屋上の隅っこで日向ぼっこしていた。誘った張本人である赤也は熱心に下を覗いて私のことは丸無視。
いい加減私に構わんかいと思って声を掛ければ、何やら面白そうなことを言うものだから一緒になって下を覗いた。
誰も居ない中庭で寄り添って何やらラブラブな雰囲気の公認カップルを二人で覗いている。なにしてんだ私。

「いーなー、やっぱおっぱいデケーんだろうなー」
「あの子、着痩せするタイプだと思う。てか、赤也巨乳派なの?」
「そりゃ、男は巨乳っしょ!におー先輩は美乳派って言ってたけど」

公認カップルはお互いに頭を預けながら他愛もない会話をしているようだ。何を話しているのかは聞こえないけど、楽しそう。まさか、屋上からじーっと見られているなんて思ってないんだろうな。
しかも隣にいるモジャモジャは、如何わしいことになるのを期待しているみたいだよ。
ちゅーしろ!とか揉め揉めとかサイテーなことをぶつぶつ呟きながら熱心に観察している。
仁王先輩のいらない情報を提供するまえに私に暖を提供しろよ!
そして巨乳じゃなくて落ち込んでいる私に気付いてくれよ。
そんなことを思いながら、かじかんできた指先をこすりあわせながら私も人様の幸せタイムを覗き見ていた。正直、面白くはないけどね。

「ねー赤也、寒い」
「ん、俺も寒い」
「もう教室もどろーよ」
「まだ何も始まってねーし」

何が始まるんだよ、この寒い中。もうすぐお昼休みも終わるのに、赤也はバカでスケベだからイチャイチャカップルのイチャイチャをまだ見ていた。
いい加減にしろよ、このくそモジャがと心の中で暴言を吐きつつ、やっぱり私そっちのけなのが寂しくて何とかして気を引きたくなる。
とりあえず、立ち上がってみても赤也は気づかない。ので、後ろからぎゅーっと抱き締めてのし掛かってみた。
反応はないけど、赤也の意識は私に向いたのは分かる。なんたって赤也はバカでスケベだから。

「なー名前、あったかい」
「うん。私さむい。主に背後が」
「名前のおっぱい当たってる」
「どすけべ」
「へへっ」

へへっ、って何。誉めてない。
いい加減、赤也も飽きたのか私を引き剥がすと柵に凭れて座り直した。
それから、ん、と両手を広げてきたので私はお言葉に甘えてその両腕に収まった。あったかい。

「名前やわらかい、あったけー」
「覗き面白かった?」
「んー、あんまり。覗くより、実際にイチャイチャした方がいい」
「そりゃそうだ」

遠くでチャイムの音がしたので、私たちは立ち上がった。手をつなぎながら教室まで帰ると、やはり切実な男どもからリア充爆発しろ!と言われた。


青い春
(公認カップルと私たちはジャンルが違うらしい)
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