「似合ってるよ、景吾」
「アーン?俺は前の方がよかったんだよ」

放課後、誰も居ない教室で二人きり。
目の前に座る景吾に私はそう言った。
言われた彼は不機嫌そうに肘をついた手に顔をあずけて答える。

「でも、本当に坊主にされなくて良かったね」

氷帝は全国大会で青学に負けた。
みんないい戦いをしたと思う。
心に残るような、感動できる試合だった。

「うるせぇ、俺様が坊主になんてなったらファンが泣くだろ。名前が一番泣くんじゃねぇの?」

最後の試合は景吾と青学の越前くんで、バカな景吾は越前くんの挑発にのって「負けたら坊主にしてやるよ」なんて約束して。
それで、負けて…見事に坊主にされてしまった。
気を失ってたときにどこから持ち出したのか越前くんが電動バリカンでササッと。
流石に坊主は可哀想だと思ったから、スポーツ刈り程度にしてくれたんだろうね。
景吾にしたら気がついたら自慢のサラサラヘアがなくなってて相当ショックみたいだけど。

「大丈夫。誰も泣いてないから。」

私も本当は、綺麗な髪がなくなってちょっとだけ寂しかったけど、これはこれでいいんじゃないかと思う。
サッパリしてて前よりスカッとしたしね。

「でも大騒ぎしてたじゃねーか」

確かに、いきなりのイメチェンに学校中が大騒ぎだった。
休み時間はスポーツ刈りの景吾を一目見ようと教室の前は超満員。
ま、みんなそんなにショックは受けてなかったけど。
むしろ惚れ直した!みたいな。
と言っても、大半の生徒は試合を見に行ってたから事情は知ってたけどね。

「ねぇ、やっぱり短くなったからスッキリしたんじゃないの?」
「まあな、でも気にくわねぇ」
「また伸ばせばいいじゃん」
「簡単に言うんじゃねぇよ」

苦笑いして私の頭を景吾が小突く。
引退してから景吾はすこし大人しくなったと思う。
相変わらずナルシストな所もあるけど前ほどではなくなったし。
やっぱりテニスが出来ないから寂しいのかも。

「でも私はどんな景吾でもかっこいいと思うけどね」
「ふん、当たり前だ。俺様に似合わないものなんてねぇよ」
「いや、あると思うけど…」
「何か言ったか?」
「何も言ってませーん」

笑った私の頭を景吾がわさわさと撫でる。
子供扱いされてるみたいで(同い年なのに)イヤだけど、景吾の手が優しくてつい嬉しくなってしまう。

「景吾、お疲れ様ー」
「何がだよ」
「いや、何となく。色々とお疲れーと思って。私、景吾のこと大好きだなー…」

手を握ってそう言うと、景吾は少し赤くなった。

「可愛いじゃねーの、名前」
「なっ…」
「ククッ、仕返し」
「もー!」

突然の言葉に赤くなってしまった私。
景吾には到底勝てそうにない。


幸せが目に見えたら
(きっと部屋中が幸せで充満してる)
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