「こんなとこに居た!」
「…何?」
「アンタ、ふざけてんじゃないわよ!」
「ってぇ!何すんだぃ!」
「殴ったの」
テニスコートから少し離れた木の下のベンチに、私の探していた丸井ブン太は座っていた。
部活中に居なくなったから探しに来たのだ。
いつものように呑気にガムを噛んでいた。
今日は真田が先生に呼ばれて居ない。
柳も居ない。
それをいいことに部員達はみな好き放題だ。
しまいにはこの男のようにテニスコートから姿を消す奴も出る始末。
やっぱり、我が立海大には真田という人物がかなり必要だと思う。
それにしても、どうして注意する人物が居なかったらこうダラけるのか…。
「そんな怒るなって。ここ、座れよ。」
「何も分かってないんだから!さっさと部活戻りなさい!」
「いいじゃん、いいじゃん。真田いねぇし」
「戻ってくる前にちゃんとやっとかないと怒られるから言ってるの!」
「いーから、いーから座れって」
私の腕を掴んで無理やり隣に座らせると、ブン太はガムを膨らました。
一つガムを投げてよこすと、それでも食って機嫌直せって。
私ばっかり怒ってて何だか馬鹿らしくなってきたから、ブン太に貰ったガムを口に入れてため息を吐く。
怒る気力も一緒に出てしまったみたいだ。
「美味しいだろぃ?俺のオススメ!」
「オレンジ?」
「そっ、まぁ一番はグレープだけど」
ニッと笑ったブン太の顔を不覚にも可愛いと思ってしまった。
「でも、オレンジも大好きだぜぃ!オレンジって名前のイメージあるし」
「私がオレンジ?」
「だって、いっつも笑ってて怒ったら恐いけど優しいし!だからオレンジ!」
「何それー…」
ブン太が思い切り笑顔になるから私もつられて笑顔になった。
私はブン太のほうがオレンジだと思う。
それは言わないけど。
「ま、名前も俺が大好きってことで!」
「なっ!」
「照れんなって〜!」
結局、当初の目的もすっかり忘れて後で真田に思いっきり怒られたのだった。
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