「…」
「……殿」
「…」


一体私はどうすればいいのだろう。目の前には私を呼びつけた殿が座っているのだけれど、何度声を掛けても反応がない。というか、私が反応できない。どうして、両目に眼帯をつけているのかさっぱり分からないのだ。こういう時、小十郎さんなら鋭く的確なツッコミが入れられるんだろう。生憎、私はそんな高度なことが出来る質ではなかった。とりあえず、この沈黙を何とかしなければ。


「あの、殿…いったい何用でしょうか」
「…」
「…?」


私の問いかけに殿はゆっくりと自分の眼帯を指差した。眼帯を見ろってことなのだろうか。もしかして新しい眼帯なのかもしれない。殿の眼帯をよく見ると、何やら文字が描かれていた。右は女、左は子。…さっぱり意味が分からない。


「…あの、素敵な眼帯ですね」
「うむ、そ、そうだろ」


照れたように答えた殿にホッと胸を撫で下ろす。どうやら、困ったら褒めろという小十郎さんの教えが効いたようだ。殿が何故両目に眼帯をしているのかは謎のままだが、眼帯に命を掛けているような人だからきっと何か仕掛けでもあるのだろう。もしかして、あの眼帯から女と子が出てきたりするのかもしれない。…それは流石に無理か。


「名前…どうだろうか」
「?はい…発想が殿らしくておもしろいです」
「ほぅ、それで?」
「え…」


心なしかモジモジしている(ように見える)殿に私は戸惑った。何を言えばいいのか分からない。正直殿の眼帯は実用性がなさすぎる。今もきっと両目眼帯のせいで前なんて見えていないだろう。私に何を求めているのかは知らないが、殿は期待しているようでそわそわしだした。


「(助けて小十郎さん!)…」
「殿、軍議の時間ですよ…って何してるんですか」
「小十郎さん!後お願いします」
「あ、名前殿」


タイミング良く現れた小十郎さんに殿をお任せして(押し付けて)私は部屋を出た。殿には悪いけど、私には気のきいた言葉が見あたらなかったのだから仕方ない。


眼帯ラブレター
(どうだ、小十郎。名前に眼帯でラブレターを書いたのだが…)(女子になってますよ、殿)(…)

back
ALICE+