「あ、名前!」
「えっ?おねね様!?」


松尾山へ馬を走らせていた私は、呼ばれて振り返る。そして、ニコニコとこちらを見るおねね様に驚き馬を止めた。どうしてここに居るのか、何をしているのかなど疑問はたくさんあるが今は急ぎ松尾山に向かわなければならない。一刻も早く小早川を動かさないと勝利が危ういのだ。


「おねね様、ここで何をしているのか知りませんが、危ないのでお帰りください。それでは私は急ぐので」
「ちょっと、どこへ行くのさ!」
「ぐえっ」


頭を下げて再び馬を走らせようとした私の襟を掴んだおねね様のせいで一瞬息が止まる。間抜けな声を上げて、馬から落ちそうになった私はおねね様に抗議の声を上げた。


「おねね様、私を殺す気ですか!?」
「それくらいじゃ死なないでしょ」
「う…」
「それより、どこへ行く気だい?暇なら手伝っておくれよ」
「暇などでは…」


私の言葉には耳をかさずにおねね様は話を始める。こうなったらもう止められないことは今までの経験から分かっていた。早く小早川の元へ急がねば負けてしまう。そして三成に怒られる。だけどおねね様を無視するわけにもいかない。一人あたふたする私のことなど、全く気にもとめていないおねね様は最後に私の肩に手を置きにこやかに言い放った。


「名前、この戦止めさせるよ」
「なっ…!?何言って…無理ですよ!」
「無理なんて誰が決めたんだい?」
「それは…」
「じゃあ、秀秋のこと頼んだよ。出来なかったらお説教だからね!」
「あ、ちょっと!おねね様…」


私の声も聞かずに走り去ってしまったおねね様。私はどうすればいいのか分からずに立ち尽くす。とりあえず、三成よりおねね様の方が怖いことに気づいて私は松尾山へ馬を走らせた。


風と共に去りぬ


結局、おねね様によって中断したこの戦。まんまとお説教を食らった三成に睨まれたのは、言うまでもない。
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