京都校姉妹交流会、前日
こんこん。
乙骨優太は音に気づいて部屋のドアに向かう。開けると目の前に赤髪の少女、もとい同級生の橘が小袋を抱えて立っていた。
足元にはお行儀よくお座りしている使い魔のシルバーが乙骨を睨んでいる。大型犬の形をしている呪霊なだけに威圧感があるようで乙骨は内心、後ろに下がりたいと思った。
「今大丈夫だった?」
「あー、うん。まだ少し散らかっているけど、どうぞ」
橘はお邪魔します、とひとこと呟き部屋の中に足を踏み入れた。乙骨は椅子に座るよう促し、自身はベッドの上にあった荷物を手早くひとまとめにして、ボストンバックに構わず突っ込む。ー明日は京都校姉妹交流会のために唯一、1年で乙骨が選ばれ、上級生と同行するのだった。
「どうしたの?」
「これを君にと思って」
橘は膝の上にのせていた小袋を乙骨に渡した。足元で伏せているシルバーはつまらなそうに、長い尾を振っている。乙骨は開けても良いか聞き、そっと袋を開けた。そこには薄緑色の液体が入った小瓶が数本入っていた。
「これって…」
「君には里香がいるからいらないと思ったんだけど、保険はあってもいいかなって。私特性ポーションというべきか…。所謂回復薬。ゆっくり効くタイプ。よかったら使って」
乙骨はひとつ小瓶を手に取り、軽く振ってみる。水のよりかは少し粘着質に、たぷんと揺れた。こまかな緑色の何かもゆらゆらしている。回復する源だという。怪しさ満点の薬だけれど、クラスメイトの差し入れにありがとう、とお礼をいうと彼女はにこりと返した。
「荷物、少ないわね」
使い魔が暇を持て余しているのか、橘の膝の上に頭をのせ撫でてもらっている。乙骨は本当に大型犬のようにしか見えないと思ったが、幾度の戦闘を思い出し打ち消した。しかし乙骨は少し羨ましげに彼女らを見る。
「数日分の着替えだけだからね。…でもなんで僕だけ…」
ーみんなと行きたかった。
言いかけた言葉は飲み込んだが、口の端からこぼれたのも同然だった。乙骨は転校してきてからというもの、さみしがり屋だった。彼女は彼の言いたいことを汲み取り理解する。
「ひとりじゃないわ、里香がいるじゃない。最強の味方よ」
使い魔を撫でながら当然のことのように言う彼女に、乙骨はきょとんとした。考えようではそうなる。自分のことをよく知っている、一番頼れる存在だと思う。
「それでも寂しいというなら、明日写真撮りましょ。みんなで見送るし、その時に」
「エッ、見送ってくれるの?」
「嫌だった?でも4人で決めたことだから乙骨の拒否権はないけど」
「拒否権僕にないんだ?!」
「もちろん。私達の分も頑張ってもらわなきゃ」
真希なら「ボコボコにしてこいよ!」って言うでしょうね、と橘が言えば、乙骨も頷き、笑いながら同意した。2人はクラスメイトみんなでいつか京都旅行に行こうと約束し、乙骨は橘を寮の途中まで見送った。
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こんこん。
乙骨優太は音に気づいて部屋のドアに向かう。開けると目の前に赤髪の少女、もとい同級生の橘が小袋を抱えて立っていた。
足元にはお行儀よくお座りしている使い魔のシルバーが乙骨を睨んでいる。大型犬の形をしている呪霊なだけに威圧感があるようで乙骨は内心、後ろに下がりたいと思った。
「今大丈夫だった?」
「あー、うん。まだ少し散らかっているけど、どうぞ」
橘はお邪魔します、とひとこと呟き部屋の中に足を踏み入れた。乙骨は椅子に座るよう促し、自身はベッドの上にあった荷物を手早くひとまとめにして、ボストンバックに構わず突っ込む。ー明日は京都校姉妹交流会のために唯一、1年で乙骨が選ばれ、上級生と同行するのだった。
「どうしたの?」
「これを君にと思って」
橘は膝の上にのせていた小袋を乙骨に渡した。足元で伏せているシルバーはつまらなそうに、長い尾を振っている。乙骨は開けても良いか聞き、そっと袋を開けた。そこには薄緑色の液体が入った小瓶が数本入っていた。
「これって…」
「君には里香がいるからいらないと思ったんだけど、保険はあってもいいかなって。私特性ポーションというべきか…。所謂回復薬。ゆっくり効くタイプ。よかったら使って」
乙骨はひとつ小瓶を手に取り、軽く振ってみる。水のよりかは少し粘着質に、たぷんと揺れた。こまかな緑色の何かもゆらゆらしている。回復する源だという。怪しさ満点の薬だけれど、クラスメイトの差し入れにありがとう、とお礼をいうと彼女はにこりと返した。
「荷物、少ないわね」
使い魔が暇を持て余しているのか、橘の膝の上に頭をのせ撫でてもらっている。乙骨は本当に大型犬のようにしか見えないと思ったが、幾度の戦闘を思い出し打ち消した。しかし乙骨は少し羨ましげに彼女らを見る。
「数日分の着替えだけだからね。…でもなんで僕だけ…」
ーみんなと行きたかった。
言いかけた言葉は飲み込んだが、口の端からこぼれたのも同然だった。乙骨は転校してきてからというもの、さみしがり屋だった。彼女は彼の言いたいことを汲み取り理解する。
「ひとりじゃないわ、里香がいるじゃない。最強の味方よ」
使い魔を撫でながら当然のことのように言う彼女に、乙骨はきょとんとした。考えようではそうなる。自分のことをよく知っている、一番頼れる存在だと思う。
「それでも寂しいというなら、明日写真撮りましょ。みんなで見送るし、その時に」
「エッ、見送ってくれるの?」
「嫌だった?でも4人で決めたことだから乙骨の拒否権はないけど」
「拒否権僕にないんだ?!」
「もちろん。私達の分も頑張ってもらわなきゃ」
真希なら「ボコボコにしてこいよ!」って言うでしょうね、と橘が言えば、乙骨も頷き、笑いながら同意した。2人はクラスメイトみんなでいつか京都旅行に行こうと約束し、乙骨は橘を寮の途中まで見送った。
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