「あーっ、喰われた…」



真っ赤に染まったテレビ画面に1つ大きな溜め息を吐き、コントローラーを投げ出す。
もういいだろう、そんな意図を含ませ顔を歪めたまま振り返った三上は、視線の先にいた無表情のまま顔面蒼白で涙をぽろぽろ流す莉子と、冷や汗を流しながらそんな莉子の耳を塞いでいる藤代に目を見開いた。



***



「みーかみ先輩っ」



背後からかけられた、語尾に音符マークが付きそうな程に明るい声。
頭で理解するよりも先に身体が発する嫌悪感に、隠そうともせず顔を歪めた三上は盛大に溜め息をついた。
嫌々ながらも振り返れば、そこには予想と違わぬ人物が立っていて。
にこにこ、惜しみなく機嫌の良さそうな笑みを零している莉子。



こいつがこんな顔をしているということは、と視線を巡らすと莉子の少し後ろにはこれまた機嫌の良さそうな藤代がいて。
またこいつらか。もう慣れてしまった自分に嫌気が差す。



「今夜暇ですか?」
「お前らと赤いおじさんを走らせる時間は無ェ」
「やだ、赤いおじさんは走るんじゃなくて落ちるんですよ」



正確にはキノコたちに落とされるんですけどね。
ケタケタと笑う莉子にますます三上の眉間に皺が寄る。
面倒臭い。非常に面倒臭い。
藤代と莉子のコンビはどこまでも自分に不幸しか運んでこない気しかしない。



「でも今夜は違うお誘いなんですよ。私たちどうしてもクリア出来ないゲームがあって」
「知るか。」
「えー!三上先輩絶対ゲーム得意じゃないスか!手伝ってくださいよー!!」
「だぁぁ!お前まで寄ってくんな!!」



ギャンギャンとじゃれついてくる藤代に嫌気が差し、根負けして了承したのが部活後のこと。
ニヤリと笑い合いガッツポーズを交わす2人に後悔の念を抱きながら、結局三上は夕食後にまたいつぞやのコントローラーを握ることになった。



***



「は、ちょ、森泉!?」
「三上先輩、どーしましょ…」
「いや、寧ろ俺が状況説明して欲しいんだが」



虚空を見つめたまま未だ涙を流し続ける莉子。
そのままずるずると上半身が下がっていったかと思うと、ついにはぺたりと床に蹲ってしまった。
とても奇妙な体制のまま小さくなる莉子にますます現状が分からなくなる。
数秒その少女の塊を見つめた三上は、とりあえず引き攣った笑みを浮かべている藤代に無言の圧力をかけてみた。
ぽりぽりと頬を掻きながら、明後日の方向を見つめる藤代。



「や、最初は三上先輩にホラーゲームやらせて、ビビってる所を爆笑しようって話だったんスよ」
「ほんとお前ら悪趣味だな」
「だけどなんか、途中から莉子の様子がおかしくなって…」



終いにゃコレっす。
指さされた先、蹲る小さな物体。
はぁ、と盛大な溜め息をついた三上は、頭の中で繋がった糸に面倒臭いと顔を顰めると莉子の頭をぐしゃぐしゃと掻きまわした。
普段なら抵抗される筈のその行為は、だがぴくりとも動かなくて。



「ったく、自分が怖いならホラーゲームなんか持ってくんなっつの」
「…」



ゆるゆると伸びた腕が三上の服をぎゅっと掴む。
それにもう一度溜め息を吐き出した三上は、藤代にゲームを片付けさせるとその日の睡眠時間を諦めた。



(み、三上先輩…)
(あん?)
(…す、すみませんでした…)
(そこは礼の1つでも言っとけよ、可愛げの無ェ)






20110925