お前たち付き合っているのかと、そんな茶化しも入った物言いに冷静に返す姿はどちらも自然体そのものだった。
「でもさー、正直なところお前ら恋愛感情とか無いの?」
「んー、孝介に彼女が出来たら祝福するよ」
昼休み、同じ野球部マネージャーである千代を訪ねて7組に行き、そのままの流れで他の部員も交えて弁当を囲む。
上記の質問を口にしたのは主将である花井で、現役男子高校生らしい話題ではあるものの彼の口からそんな言葉が出るとは。なんとも時の流れは人々の間から遠慮を取り除くものらしい。
まぁ別に慣れているし嫌でもないが。ぱくり、唐揚げを口に放り込む。
「寂しいとは、思うかなぁ」
「兄妹みたいな感じ?」
「んー、従兄妹でも結婚出来るのは知ってるし…異性だとは思ってるんだけど」
「それにしては遠慮ないよな」
今どき本当の兄弟でも異性だと口をきかなくなったりもするらしいご時世の中、阿倍の台詞はある意味正論なのかもしれない。
「付き合いたいと思ったことはないよ。でも結婚するなら孝介がいいなぁ…孝介に他にお嫁さん候補がいないなら」
「ワカラネー」
「そうかな、私は素敵だと思うよ」
にっこり笑いかけてくれる千代にこちらも笑い返すと同時、教室の入り口からおいと声がかかる。
昔よりも低くなった声。でもやっぱり聞き慣れた、一番耳に馴染む声。
「次変更だと。視聴覚室」
「うぇ、ありがと」
時計を見上げると予鈴まであと3分。迎えに来てくれたらしい。
広げたままだった弁当箱を片付けて、扉の前で待っている泉のもとへ向かいながらじゃあねと7組メンバーに手を振る。
と、何を思ったのか徐に水谷が口を開いた。
「泉ーぃ、結婚するなら誰とがいい?」
「あん?」
既に身体半分ほど廊下に消えかけていた泉は水谷の言葉に再び教室を覗きこみ、若干機嫌悪そうに顔を顰めたもののこの表情は彼にとっては機嫌を損ねた故ではなく突然何だという意思表示で。
水谷だけでなく他の部員たちも見つめてくることに首を傾げ、だが従兄妹がお待たせと教室を出てきたのでその姿を親指で示し。
「コイツかな」
お待たせ。ん。
短く言葉を交わして7組を去っていく2つの背中。
「…アイツらって結局なんなの?」
「さぁ…」
手を繋いでいるところは見たことないが、自転車の二人乗りは日常茶飯事で。
よく一緒にいるけれど笑いあっているよりは互いに無表情なことが多く、また恋愛感情は全くないと明言するものの異性だとは認識しているらしい。
そして、お互いに相手が理想の結婚相手だと。
なるほど、分からない。
平行線の二人だった
(初めからぴたりとくっついて離れることはない)
20121013