いつもそう。
何かしらあるとあいつは姿を消す。とは言ってもそんな大層なことではなくて、同じ場所に居るんだけれど。
秋になるとコスモスが綺麗に咲く河川敷。とある橋の下、犬の散歩をするような人しか通らない所で彼は愛用のヘッドホンでお気に入りの音楽を聴きながらぼんやりと思考の整理をするのだ。
…今日は先回りでもしてみようかな。
そう思い立って軽い足取りで川沿いを歩いてみた。だんだんと早くなってきた夕日の時間に、季節の移り変わりを感じる。


丁度腰掛けるのにぴったりな平坦な岩があって。そこに座って、橋の影から明るいオレンジ色の空とそれを反射させる水面を眺めていたら、私の方に向かって伸びる影が1つ。
ふふ、びっくりしてる。
珍しく目を真ん丸にしてこっちを見つめていたと思ったら、私の緩んだ頬が気に食わなかったんだろう、そっぽを向かれてしまった。ちょっと尖った口が可愛いなんて言ったら余計に怒っちゃうんだろうな。


「ごめんね?」
「…謝る気無いでしょ」


ゆるゆるのままの頬っぺたを指差して溜め息。
でもどうやら機嫌はそんなに悪くないみたいだから、近くに寄ってみた。さすがに抱きついたら怒られるだろうから、寄りかかるみたいに少しだけぶつかってみる。
私と、君と。大きく伸びた影が1つに重なって。
背伸びして首にかかってるヘッドホンを私の首へと奪い取った。特に深い意味はないんだけど、でも私がいるときはこれ、必要ないでしょう?
調子に乗っちゃうよ、だって貴方が追い払わないから。


「卵焼き作るときにマヨネーズ入れるとふわふわにできるんだって」
「君、料理なんてできたっけ」
「んーん、でもなんかそういう裏ワザ?みたいの知ってるとなんか女子っぽくない?」
「そういうもんなの?」


ふっと彼の口元が緩んだ。
レアって程でもないけど、でも他の人よりも私が多く見ていると自惚れている表情。この優しい顔、好きだな。
くだらない話しかしてないし、付き合わせているだけだけど。こんな時間は私のお気に入りで、一緒にいてくれるのがすごく大事に思えるんだよ、なんて。
私がこんなこと言ったら、君はどう思うんだろう。くだらないって鼻で笑う?重いって引く?それとも、また優しく笑ってくれるかな。
だって、捻くれ屋で毒舌で、愛想なんて持ち合わせてもいない人が。こうやって穏やかな空間を作ってくれるなんて凄いことでしょう?


「みっちゃんたちがね、今日一周年だーって」
「…あぁ、だから煩かったんだ」
「そんなこと言って。いいじゃん、らぶらぶだよ?」
「騒ぐことと仲良いことは繋がらないデショ」


私の思惑に気付いたんだろう、ちょっと嫌そうに眉を顰めた君はまたぷいっとそっぽを向いてしまった。
強請ってみてもいつも面倒くさいって言ってくれないから。素直じゃないなぁなんて笑って返すけど。
たまには聞きたいな、告白のときに言ってくれた言葉。




20150917