春の君に縋る
「レオナ、レオナ!聞いてください、朗報です!」自室で昼寝をしていたレオナの身体に両手を添えたアデルは何度も揺する。十分な睡眠が取れていない中、無理矢理起こされたレオナは不機嫌そうにアデルを見た。その表情は喜々としていた。
「あァ……?」
「あのですね…」
そう言い掛けたアデルは自分の胸の上に両手を置く。
「好きな人に揉んで頂けると大きくなるそうです!」
「…そうか」
確かに、ホリデーの際に胸が控えめという事をアデルが気にしているのを本人から聞いた。が、レオナにとっては別段気にする事でもない、寧ろどうでもいいというレベルの事だった。胸の大きさぐらいでアデル自身の価値がレオナの中で変わる筈がなかったからだ。
再びごろんと寝返りをうち、昼寝の体勢に入るレオナを慌ててアデルは揺すり起こす。
「レオナ、寝ないでくださいよ…」
しょんぼりとした、落ち込んだ声に仕方なく身体を起こす。
「自分でやれよ、めんどくせぇな…」
「好きな人じゃないと駄目なのです」
軽く頬を膨らませたアデルに思わず溜息が溢れる。お願いの内容が内容なのだが、こうも折れずに甘えてくる姿は少し珍しかったのもあり仕方なく膝を叩く。嬉しそうな笑みを見せたアデルはそのままレオナの脚の間に座り、背中を預けた。体格差のある小柄な身体はすっぽりと収まる。
自室とはいえ寮だ。脱がせるわけにもいかないので寮服の上から手を乗せる。服越しという事もあり小ぶりな胸はレオナの手の中には簡単に収まった。そのまま丁寧な手付きで指を動かすと、女性特有の柔らかい感触が指越しに伝わる。
本当に、何を悩んでいるのかが触れているレオナにはわからない。あるならいいんじゃねぇか、と告げて怒らせた事もあったのだが。
アデルの耳がぴくり、と揺れる。暫くすると、レオナの腕を軽く掴むようにアデルの手が触れた。
「…レオナの顔が見たいです」
此方を振り向いた顔の何と情けない事。頬を赤く染め、眉を下げた表情からは自分で言い出した筈の置かれた現状に恥ずかしくなってしまったであろう様子が手にとってわかる。
「やめだ、やめ」
今にも泣き出しそうな気さえして、こっちが虐めてる気まずささえある。何とも言えない空気感の末、胸から手を離したレオナはアデルの腰に手を添え、そのままベッドへと身体を横たえた。
「俺は寝る、お前も寝ろ」
有無を言わさず事を終わらせた挙句、眠りに落ちたレオナに対して何も言えなくなってしまったアデルは感情の行き場を無くしてしまった。確かに触れられてドキドキしたし、効果はありそうではあったのに。こうなってしまったレオナが当分起きないのはわかりきっていたので、諦めて背中越しに感じる温もりに身体を預ける。まだ高鳴る心臓は止みそうにない。