ずるい、だからずるい

「…何だそれは」
足取り軽く自室にやって来たアデルは胸元に抱えている得体の知れない大きな人形を此方に差し出す。
「可愛らしくないですか?レオナですよ、レオナ!」
「どこがだ」
各々のパーツに既視感はあるが、それが自分自身であるとはレオナは到底思えなかった。何だその表情は。そうと言うのにアデルはとてもお気に召している様で、レオナとは似ても似つかないと思える人形を抱えて可愛がっていた。その態度が何か無性に腹立たしくも感じ、つかつかとアデルの前まで歩いた矢先、その人形を両の手で掴む。
「あぁ!」
引き剥がすようにその人形を奪い取る。間近で見ても到底似てるとは思えない。こんなものに愛情を注いで楽しいか?目の前に本人がいるというのに。そのまま後ろ手に人形を投げるとベッドへと落ちたのか、軽い音が聞こえた。
「レオナ!酷いですの!」
一方的に人形を取り上げられたアデルは案の定怒っていた。怒らせたのはこちらだが、怒らせると宥めるのが面倒くさい…と対処法を過ぎらせる中、アデルが来る少し前、突如部屋に現れた人形の事を思い出す。
手のひらサイズのアデルを模した人形、人形遊びをするつもりはないが、雑に扱うのも気が引けて机の上に放置していた。それを思い出したレオナはその人形を片手で掴み、アデルをじっと見る。
「…な、何ですの?それ、わたくし…?」
そのまま高々と上げた人形を口元へと引き寄せ、口付けを落とす。わざとらしく、アデルに魅せつけるように。
「あ、」
呆気に取られた声と表情に、してやったりと笑みを浮かべ返す。
「確かにこれは可愛いな。お前が気に入る理由がわかるなぁ?」
なぁ、アデル。と問い掛ける人形は答えない。
その代わり、自分の腕を掴む小さな手が触れ、俯いたままのアデルが此方を見上げた。
「そ、それは、わたくしに、してほしい…です」
語尾に行くにつれて、段々と小さくなっていく言葉にくつくつと笑いが溢れる。まんまとレオナの作戦に引っかかったのだ。
「なら、最初から俺にしとけ」
人形を机の上に戻し、目の前のアデルに視線を落とす。恨めしそうな表情は待ち望んでいるとしか思えない。ぎゅっと結ばれたその唇にキスを落とす。
人形に嫉妬だなんて笑わせんな。