幕間はおわり


確かに、いつもより少し熱っぽい気はした。ただそれだけの異変だったのに、主人を目の前にした瞬間身体の奥底から込み上げてくる熱は、今までに感じた事がない程に"異常"としか思えなかった。
「…ロッティ?」
きょとん、とした表情の主人が首を傾げる。名前を呼ばれただけなのに、熱に浮かされた頭は思考と共にぐらぐら揺れるばかり。こんな情け無い姿を晒すなんて、はしたないにも程がある。無礼は承知の上、早く、早く此処から立ち去らなくては。
「な、ぎさ様…」
一歩、一歩出来るだけ距離を取ろうと、扉に向かって後ずさる。ふらふらとおぼつかない足元は数歩で膝から崩れ落ちた。
「あぁ、辛いね。熱がある」
伸ばされた手が前髪を掻き分けて額に触れる。ひんやりとした冷たさが熱を奪い取っていく。その冷たさに意識も理性も全て持っていかれそうなぐらいに、思考は回らなくなっていた。
「っ、駄目です…。凪砂様、離れ、て…」
「…大丈夫、私が楽にしてあげる」
その言葉を境に、熱とは違う暖かさに身体が包み込まれる。背中に回された手、密着する互いの衣服。
ぼろぼろと瞳から涙が溢れ出す。どうしてこんな、こんな事に付き合わせてしまうなんて、駄目なのに。